日本よ、本当に大丈夫か No.49【2004年10月22日】
■誰のための日米安保条約?
経営再建中のダイエーが産業再生機構の活用を受け入れることを決めたことについて、竹中平蔵経済財政担当相は13日、「大変結構なことだ」と歓迎の意向を表明している。その一方で、コクド等のグループ会社による持ち株比率を過少記載していた問題で、引責辞任した西武グループの総帥、堤義明コクド会長が15日までに東京証券所、関東財務局、国土交通省等から事情徴集される流れとなった。
なんとも嫌な流れである。すべては「失われた10年」と云われる『創造なき破壊』の結果であり、世界を弱肉強食化するミルトン・フリードマンの唱える『市場原理主義』を強制するドル帝国主義によって、世界一勤勉な私たち国民のかけがえのないお金が、アメリカに占領され、収奪され続けた結果である。そしてたぶんそんな風なアメリカのやり方に、日本の言論人や政治家や官僚たち等に有無を言わせないために、在日米軍基地が敗戦から59年も過ぎた今も、沖縄や三沢をはじめとして日本国内に140カ所もあり、アメリカ軍の実戦部隊5万5000人が日本に駐留し続けているわけなのである。
日米安保条約は、占領された日本が強引に結ばされたものである。この条約によると、駐留米軍は日本を守る義務はない。巷で言われていることと、まったく逆である。1992年1月のワシントンポスト、アメリカ国防総省のアドバイザーグループである「統一戦略目標研究会」がまとめたレポートによると、戦略ミサイルのターゲットに日本がなっているようであるし、同じ年の3月にニューヨークタイムズに喝采された国防総省指針草案にも、日本の軍事的台頭を防ぐには在日米軍の駐留が必要だ、と述べられている。
ようするに、駐留米軍は日本を守るというよりは、植民地日本を脅し、監視するために存在しているようである。冗談じゃない証拠として1988年に、アメリカの駆逐艦タワーズが日本の巡視船を標的に射撃訓練を行なっている。「彼らの銃口」は、青い空に向けられているわけじゃないのだ。いつのまにか私たちは、平和ボケした言論人と政治家にすっかり取り囲まれてしまっている。こんなことを語れる日本人は、本当に例外なのである。
■多国籍企業と内需関連企業の運命的落差
話をもとに戻すが、竹中大臣によると「景気は回復途上にある」ということになっているが、何故か地方の消費は冷え込んだまま、ひどい状況で見捨てられている。それを裏付ける証拠として、9月の銀行貸出残高は前年同月比で3.1%減である。百貨店販売額は、8月が前年同月比で4.7%減で、6ヶ月連続減少であり、スーパー販売額は、8月が前年同月比で5.8%減であり、10ヶ月連続の減少である。私の実感では、少なくともこの5年間はずっとこんな感じである。
注目のダイエーも、8月の既存店売上高は前年同月比で7%減である。また上半期の倒産件数は、前年同月比18%減であり、回復途上というよりは、まだまだいつ悪化するかわからない状況なのである。竹中大臣は、片方では景気は回復しつつあると言いながら、もう片方ではUFJやダイエーに対する金融庁の査定を厳しくして、産業再生機構による解体を意図的に企んでいる。アメリカ資本の会計事務所による圧力を無視して資産査定を適正に行なうなら、長い目で見れば、UFJもダイエーも素晴らしい優良企業のはずなのである。
国際金融資本の手先であるミルトン・フリードマンは「景気回復のために、企業はどんどん借金しろ」と一方で煽りながら、その舌の根も乾かないうちに、今度は「借金が巨額なのは問題である。景気回復のために、借金を増やした企業は解体せよ」とヌケヌケと主張しているのである。誰が聞いても、これは詐欺以外の何物でもない。竹中・小泉コンビは、このふざけた『市場原理主義』を唱えるインチキなマネタリスト、ミルトン・フリードマン教祖の信奉者である。はっきり言って、彼らは民主主義をズタズタにするギャングのような存在である。
国際金融勢力によって国内産業のほとんどを、企業の血液である金融機関はもちろん、金融資本のように簡単に移動できない不動産や百貨店やレジャー娯楽施設、或いは日本語という言語の壁のために多国籍企業に変身できない新聞や大手メディアが乗っ取られ、解体されようとしている。もちらん地方の地場産業や景気に敏感なサービス関連企業も皆壊滅的な打撃を被っている。かけがいのない独特な、効率化されえない伝統的で美しいものほど消えていく運命に晒されている。
だからダイエーや西武の経営責任の問題ではなくて、あくまで『市場原理主義』を信奉して「構造改革」という名の『創造なき破壊』をおこなった小泉政権のやり方のせいであり、いまだにアメリカ様の言いなりになっている官僚や政治家のせいなのである。スーパー各社の8月決算における営業利益率は、いちばん良いヨーカドーで1%、西友が0.9%、ダイエーは0.8%、イオンが0.2%なのである。
はっきり言って流通各社はみな、半分片足を棺おけに突っ込んでいるようなものなのである。もしかしたら竹中大臣は「産業再生機構に任せれば、プロによる自力再建よりも、はるかに金儲けの才能があるに決まっている」と信じているのだろうか。なるほど…だからこそ郵政民営化も、産業再生機構にすべて任せて、誰もが驚くくらい大儲けを実現してみせて、その実力を私たち国民に認めさせようようとしているのかもしれない。
今度こそ旧長銀のように、私たちの汗の結晶である税金を約8兆円も投入したあげくに、同じように国有化され、アメリカのハゲタカファンドであるティモシー・コリンズ社長率いるリップルウッドにバナナの叩き売りのような、たったの10億円という破格値で売却されるようなことは間違っても起こりえないはずである。いくらなんでも竹中大臣は、まったく同じ過ちを犯すほどアホで、マヌケであるはずがないからである。
このコラムの読者である皆さんだって、そう思うでしょう?ご立派な竹中大臣が、強引に進める産業再生機構によって税金が投入され解体されて、不良債権というダウンサイドが綺麗にされた後で、またもや外資であるウォルマート等が破格の安値で待ち受けているという噂なんか…そんなことは絶対に信じないですよね。
■なぜ今インターネット企業の球団経営なのか
そんな風な流れの中で18日、ブロードバンドの革命児、通信大手のソフトバンクが、ダイエー球団の買収にいよいよ名乗りを上げた。ダイエー球団の中内オーナーは、困惑気味に「売られる身には何も関係もない」と突き放すように記者に答えている。近鉄を争うようにして先に手を上げたライブドアと楽天は、なぜかソフトバンクとは争わないようである。分をわきまえて、残った西部と近鉄を仲良く奪い合う予定になっているのかもしれない。満を持したように登場した孫正義氏は、ダイエーが支援要請した産業再生機構や、日本プロ野球組織に買収を働きかける意向を示した。(
参考記事
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伝統的な国内の流通産業であるダイエーの中内氏や西武の堤氏が、なんと9月13日の同じ日に、支援要請受け入れや全役職辞任の表明したのだ。時代の変化をこれまでかたくなに拒否してきた歪みが、一気に表面化した瞬間でもある。それはある意味で1リーグ化を押し進めてきた渡辺恒雄・巨人軍オーナーの圧倒的な政治権力の崩壊でもあったような気がする。ひとつの時代が、戦後50年以上も国民的人気スポーツであり続けてきた球団のオーラとそれにまつわる政治権力が、その自らの自重を支えきれなくなってついに瓦解したのである。
日本プロ野球界の顔であると同時に、日本の政界のドンであった渡辺オーナーの電撃辞任の裏には、さまざまな力学が複雑に交差していたはずである。いままでの中曽根・渡辺コンビの勢力に代わって、小泉・竹中コンビのネオコン勢力が政治的にはるかに強くなって新たな潮流を創っているからである。
そのひとつの流れが今回のソフトバンクの球団買収の流れであり、ライブドアや楽天の動きなのである。たぶんその背後には、私が思うに、今まで渡辺オーナーのご機嫌伺いをしていたオリックスの宮内義彦氏がいるような気がする。
以前のコラム構造改革という「小さな政府」論の背後 でも触れたが、オリックスの宮内義彦氏は、既得権排除を唱える「総合規制改革会議」の議長の座にありながらも、あのハッタリと汚職にまみれたエンロンの日本上陸の尖兵となっていたのである。
日本プロ野球組織のヒアリングでも、『ライブドア』のアダルトサイトへの接続が問題にされていたり、孫氏の場合には、ヤフーBBはサービス開始当初、契約してもなかなか開通しない等でユーザーサポートがいい加減で総務省に苦情が殺到した件や、今春、ヤフーBBの顧客情報や通信記録まで漏えいしていた件等が、何かしら信頼に水を注す部分があったようである。
過去に於いても孫氏のビジネスモデルは、信頼性に関してかなり問題が指摘されている。例えば鳴り物入りで開設されたナスダック・ジャパンは、結局のところ大証に引き取ってもらう形になったし、あおぞら銀行株も、預金保険機構から収得はしたものの、いつのまにか売り払ってしまっている。さらに東京電力と合弁で立ち上げたインターネット接続会社スピードネットも、やはり同じように放棄してしまっている。プロ野球は情熱を持ってやると宣言して、王監督へも熱い“ラブコール”を送っているようなのだが、果たして今回もどうなのだろうか。
これまで疎遠だったアナログメディアであるテレビのゴールデンタイムにリーチをかけて、ネットというマイナーな情報検索サイトを売り込む手段として、球界の幅広いファン層を効率よく取り込み、その知名度向上のために、『野球界』を戦略的に利用しているに過ぎないように思えるのだが、私の考えすぎだろうか。かつての古き良き時代の民族企業の沈没と同時に、インターネットを操る「オタク世代」の覇者が、ついに平和ボケしたアナログTVの「オヤジ世代」に向かって、クールなオヤジ狩りの宣戦布告を開始したようにも見える。しかし日本よ、本当に大丈夫なのか?
■ブッシュ大統領再選の自信の表明?
いよいよアメリカの大統領選が近づいてきている。イラクで大量破壊兵器の捜査に当たってきた米調査団のチャールズ・ドルファー団長は10月6日、米上院軍司委員会の公聴会で「イラクに大量破壊兵器の備蓄は一切ない」と最終報告をまとめた。制裁が解除されたあとに開発再開を目指す「開発意図」があったと指摘することで、ブッシュ陣営にも一定の配慮をおこなっている。そしてチャールズ・ドルファー氏が長官顧問を勤める米中央情報局(CIA)のウェブサイトには、この報告書の内容が、さらに詳しく公表されている。
それを掻い摘んで述べると、旧フセイン政権とアルカイダなどテロ組織との関係については、「大量破壊兵器や関連物質をテロ組織に渡していた証拠はなかった」と断定されている。アメリカ国民の半数以上がいまだに9.11テロはフセインが関係していると思っているのだ。さらに、ブッシュ大統領が2003年1月の一般教書演説の中で引用した「アフリカからのウラン購入情報」に関しても、「証拠は見つからなかった」と述べ、大量破壊兵器搭載用と指摘されていた無人機開発についても、「あくまで偵察や電子戦のためのもので、大量破壊兵器の搭載能力はなかった」と認定している。
ようするにブッシュ政権が昨年3月、イラク開戦にあたって掲げた主要な根拠はすべて公式に否定されたことになる。私のコラムの読者にすれば、そんなことはとうの昔にわかっていることなのだが、重要なのは、CIAがこのことをあえて公式に発表したことを、どう読むかということなのだ。ブッシュ大統領は、フロリダで投票箱の紛失や犯罪者でない人達が6万人も犯罪者リストに載せられて投票を拒否させられたような事件等が暴かれて、かなり窮地に追い込まれたにも拘らず、最終的にはゴアに打ち勝って大統領に当選した実績がある。
つまり、不可解でインチキな不始末が幾つも暴露されながらも、それでもやっぱりブッシュの方が、アメリカ国民に支持された証としての勝利を獲得したのである。この事実は大きい。大統領選の最終局面に入った今頃になって、ボロがつぎつぎと出てくることを許すということは、政治的な道筋が、裏の世界ですでに決まってしまっている可能性が高いように私は思うのだ。
簡単にいうと、つまり、こういうことなのだ。「現ブッシュ大統領のやり方には、多少あか抜けない不手際や問題があるにしても、アメリカの国益には、ブッシュはとりあえずなくてはならない大統領なのだ。現実の政治というものはそういうものなのさ。分かってもらえるだろう?」といった具合に。ということはブッシュ大統領にとって、もはやサプライズは必要ないということなのか…。
《主な参考文献および記事》
(本記事をまとめるにあたり、次のような文献および記事を参照しました。ここに、それらを列記して、著者に感謝と敬意を表すると共に、読者の皆様の理解の手助けになることを願います。)
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小泉の波立ち ニュースの感想 (10月17日)
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また吹き荒れるIT旋風 ソフトバンク ホークス買収
神戸新聞
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戦いか破滅か 現代の黙示録を解く
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「イラクに大量破壊兵器の備蓄なし」米調査団が最終報告
『終』
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