2004年夏、新たなる9.11テロ勃発の可能性 2
No.34【2004年5月11日】
ケリー大統領候補への追い風
前回の5月4日のNo.33のコラム
で書いたように、新たに10カ国が正式加盟した今こそ、アメリカへの反感を徹底的に煽ることで、「新たなるヨーロッパ」をひとつに統一して、アメリカドル機軸体制を崩壊させてゆくための最高のタイミングであり、チャンスなのである。だから今回のイラク人虐待報道のタイミングの良いリークも、その流れで捉えると、とてもわかりやすい。「新たなるヨーロッパ」の誕生は、アメリカのドル機軸体制にとって致命的な問題ゆえに、今まであらゆる無理難題を押しつけて「新しいヨーロッパ」と「古いヨーロッパ」に意図的に分断を図ってきたアメリカの戦略に対する、ヨーロッパの満を持しての反撃と捉えることができる。
そういえば確かに、その流れはいま、イラク人虐待報道以外にも、至るところに表面化してきているようである。ファルージャから突然占領軍撤退することが決まり、「ファルージャ旅団」の司令官として、新たに元フセイン政権の将校だったモハメド・ラティフ氏があれやこれやの末任命され、治安維持な当たることになった。そして6月末に予定されているイラク暫定政府への主権移譲に向けて、ブラヒミ国連事務総長指導のもとに、宗教組織と人権団体が集まった「イラク再建国民会議」が開かれ、一応、元外交官でもあるシーア派のマフディ・ハーフィズ氏が首相になりそうな流れである。
一方ラムズフェルド米国防長官は、議会の公聴会でバクダットの刑務所でのイラク人捕虜虐待問題について謝罪し、ブッシュ大統領も6日、イラク人虐待事件で初めて直接的な表現で謝罪した。そしてブラヒミ国連事務総長特別顧問を表に立てることで国連主導に転換し、ネグロポンテ駐イラク大使率いる世界最大規模の「新アメリカ大使館」を7月1日に発足させることになる。このブッシュ政権の窮地にタイミングを合わせるかのように、ジョン・ケリー大統領候補は、仮に自分が大統領だったら、一週間以内に国連の本格的な関与を取り付け、アメリカの「単独主義」を修正して「多国間主義」に切り替える、とすかさず反撃している。
そんななか、米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏がケリー大統領候補の経済顧問チームに加わったことが報道によって明らかになった。さらに、極右メディアであるフォックスニュースまでが「ケリー支持芸能人」ニュースを大々的に掲載し始めた。普通に考えるなら、一気にブッシュに逆風が吹いて支持率が下がり、ケリー大統領候補が蘇ったように見える。もちろん日本人の多くもそう思うにちがいない。
アングロサクソン的考察?
しかしよく冷静になって考えてみると、どうも奇妙である。日本人的感性ではなくて、アングロサクソンのバイキング的な思考に、スイッチを切り替えて考えるなら、今回のアブグレイブ刑務所のイラク人虐待報道は、あまりにも次から次と情報がこれ見よがしに出てき過ぎるし、写真の専門家である私の目から見て、アブグレイブ刑務所内のどのショットも、あまりにも構成が作為的で演出臭過ぎるのだ。
はっきり言ってしまえば、この何枚もの写真とビデオは、最初からリークするために意図されて撮られたものとしか思えない種類のものだ。そしてたぶん、イスラム教徒虐待に関する調査は相当以前から計画的に行なわれていて、今回の刑務所内の虐待映像リークも、多くの予想に反してブッシュ政権内部から出てきている可能性が高くなってきたように思う。そう考えれば、極右メディアであるフォックスニュースが、普通なら考えられない民主党の「ケリー支持芸能人」ニュースを大々的に掲載したことに対しても、いくぶん辻褄が合ってくる。でも、どうしてブッシュ陣営が、あえてそんなことをしなければならないのかって?
確かに、その疑問は当然である。では、その根拠にこれから触れてみたい。ネオコン主導のイラク民主化が思うように進展しないことで、ラムズフェルド率いる国防総省主導(CPA)から、パウエルの配下にある国務省(親イスラエル主義のネグロポンテ率いるアメリカ大使館)主導に変化する。そしてそんな風な新国連決議を実行する流れのなかでアメリカは、もう一度国際コンセンサスを得ようとしているのである。そして「国連安保理新決議案」が可決された時点で、200カ国を超える国から国連の名の下に集めた「イラク復興資金拠出金数百億ドル」のさらなる「追加合意」を、アメリカはまんまとせしめるにちがいないのだ。もちろん、その最大のカモは日本である。(
参考記事
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一方アメリカが、アラブ諸国から反感を持たれれば持たれるほど、テロによる「混迷」は深まり、中東全体に戦火が飛び火する。5月1日、サウジアラビア西部ヤンブーの石油精製施設に、武装グループ4人が押し入り銃を乱射、6人が死亡した。サウジアラビア内務省によると、武装グループは犯行後、ひとりをバンパーに括りつけたまま通りを警察とカーチェイス。目撃者のヤンブー学校教師は、西洋風のヒゲをはやしたガンマン2人が遺体を引きずっていたと証言。そして銃を空に向かって発射しながら、「私たちがどんな風にアメリカ人を引きずっているか見ろ!何を見たか、政府に通報しろ!」と教師に訴え、さらに「家を去って、ジハードを起せ!」と叫んだという。
サウジアラビア内務省によると、容疑者4人の内、3人はこの施設の職員で、事務所にカードキー(入館許可証)を使って入ったという。そしてこの事件のガンマンは、アメリカ系ファーストフード店マクドナルドに発砲し、外国人学校にパイプ爆弾を投げつけた。サウジ当局者によると、容疑者は、アルカイダと関係のある武装グループで、過激派の指名手配リストに挙げられていたという。
しかし警察国家サウジアラビアで、アルカイダに関係し重要指名手配リストにある人間が、果たしてアメリカの石油施設でカードキーを無効にされずに使い続けられるのだろうか?…なんとも怪しい報道である。それに事件の流れが、なんだかファルージャでの傭兵会社の米国人4人惨殺事件に、とてもよく似ているのだ。(
参考記事
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米英軍の掃討作戦の引き金になったファルージャの傭兵会社の米国人4人惨殺事件、その報復としてのファルージャのモスク等に於ける700人を超す大量虐殺(200人前後の女子供が含まれている)、そして今回のアブグレイブ刑務所に於けるイラク人捕虜の虐待映像リーク、さらにサウジに於けるアメリカ人をバンパーに括りつけたままのカーチェイス、これら事件はすべて、アメリカ人に対する反感か、あるいはアメリカ人に対してますます憎しみをエスカレートさせて、いよいよイラクの民主化の「混迷」を深めてしまう事件ばかりである。
これらの事件によって確かにブッシュ政権の支持率は低下し、ネオコンによるイラク民主化の信頼度もかなり悪化してきている。
ブッシュ大統領の「再選の力学」
しかしこの状況こそが、ブッシュ政権の本来の狙いなのである。
4月16日のコラムファルージャをめぐる抵抗闘争の行方 と
4月6日のコラムパレスチナの不幸は日本国民の不幸 で書いたように、イラクを始めとしてサウジアラビア、シリア等の中東全体が混迷を極めれば、アメリカがイラクを先制攻撃した本当の理由であるドル機軸体制を、ユーロからもう一度取り戻せるからである。
経済制裁の裏側で、フランス・ロシア・中国・ドイツ等がOPECや国連幹部と組んで行なわれていたユーロがらみの不正資金の流れを、イラク占領と「テロとの戦争」によって断ち切ったわけである。「テロとの戦争」が激しくなればなるほど、テロリストの温床であるサウジアラビアの立場が弱くなり、いつなんどきテロリストを匿っているからと難癖をつけられて、「報復」の対象にならないとも限らない。イスラム国家集団であるOPECを主導するサウジアラビアは、これ以上の危機と「混乱」を避けるために、仕方なくユーロからドルにシフトせざるをえなくなる。
一方イスラエルにとっては、「中東和平ロードマップ」を2005年までに破棄するために、あえてパレスチナとの抗争が激しくなるように自作自演しなければならない。なぜならイスラエルの「領土拡大戦略」にとって、パレスチナを始めとするアラブ諸国に常に「混迷」を起しておかなければならない。パレスチナが武装集団から「主権国家」になって認められてしまったら、「侵略」行為はもちろん、自爆テロに対する「報復行為」さえも出来なくなってしまうからだ。
いつも言っているように、「混迷」を深めれば深めるほど、アメリカがイラクに軍隊を置き続ける「大儀」を手にすることができると同時に、アラブの石油をコントロール下に置き、ユーロにドミノ化したアラブ諸国のお金を、もう一度ドル機軸体制に引き戻すことが可能となる。ただひとつだけ困るのは、イラク民主化の失敗で、ブッシュの支持率が下がることである。それ故に私は、
1月30日のコラムで予言 したのである。
「元サダム宮殿」の悲しい未来?
つまり、新たなる9.11テロ勃発が夏頃に起きる、と書いたのである。遅くとも秋にはまちがいなく起きると思う。そしてこのテロ計画は、たぶん9.11テロの実行計画案と同じ頃か、少なくともイラク先制攻撃が決定した頃には、すでに計画されているにちがいないと思うのだ。
では、その目標は何処になるのかって?もちろん、そんなこと私にわかるはずがない。でも仮に私がアルカイダの立場になって考えるなら、そのターゲットは、例えばバクダッドの元サダム宮殿、7月1日にスタッフ3000人規模で開設される予定の世界最大規模の「新アメリカ大使館」なんか、とても面白いと思う。ブレマーCPA代表に代わり、原油埋蔵量世界一のイラクを占領指揮するネグロポンテ氏もろとも、まるで映画のシーンに出てくるような見事な爆破で、木っ端みじんに「元サダム宮殿」が一瞬で崩壊してしまうなら、メディアに対する衝撃度は相当あると思う。
そして、この劇的なテロが「偶然」起こったお陰で、その「報復」を期待するアメリカ市民によって、カウボーイスタイルの頼もしいブッシュ大統領は11月に再選されるにちがいない。ふぅ、我ながら、なんとも大胆な予言である(笑)。
時には「静寂」に浸れ
実利の世界である仕事から離れて、オンボロの1989年式のワゴニアに乗って、久しぶりにドライブ出ることにした。今日は夏のように素晴らしい陽射しが、木々に揺れて、逆光のなかで緑の葉が光と戯れるように踊って見える。ワゴニアのV8エンジンのデロデロデロという独特のサウンドが、田舎の山道にまるで生命の鼓動のようにこだまする。CDのスイッチも切ってあるから、自然のふところの中での唯一の人工的な音が、自然という手付かずの「静寂」に心地よいローテクなリズムを刻んでいく。
資本主義の灰色の世界から離れ、陽光のなかで美しい空気に包まれ、様々な鳥たちの鳴き声に耳を澄ます。ただそれだけで、自分のなかの細胞のひとつひとつが確実にめざめてくる。心地よい「静寂」に浸ることで、自分も単純な生き物であり、自然こそが自分の母なる膝元であり、仲間なのだと本能的にわかる。何か疲れたように感じるとき、私はときどき、無目的に近くの手付かずの山か、千里浜に向かってドライブする。兼六園や新宿御苑や神宮外苑や代々木公園は、はっきり言って人工的で好きじゃないのだ。
手付かずの自然の中にぼんやりと浸っていると、出来事と出来事のあいだ、言葉と言葉のあいだ、時間と時間のあいだ、0と1のあいだ、情報と情報のあいだ、思考と思考のあいだ、その微かな「すき間」にこそ、こころの自由が躍動する「かなめ」が、無限の英知が「存在」することに気づく。わたしはその「存在」に吸い寄せられるように、ときどき意味もなく自然の「静寂」に飛び込んでいく。私たちに必要なものなんてなにもない、ということにもう一度気づくために…。
《主な参考文献および記事》
(本記事をまとめるにあたり、次のような文献および記事を参照しました。ここに、それらを列記して、著者に感謝と敬意を表すると共に、読者の皆様の理解の手助けになることを願います。)
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Western
Firm Pulls Staff from Yanbu, U.S. Cautions
http://www.reuters.com/newsArticle.jhtml?type=worldNews&storyID=5009572§ion=news
『終』
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