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ファルージャをめぐる抵抗闘争の行方 No.312004年4月16日

3.31アメリカ民間人4人殺害に対する報復大虐殺劇

4月14日のフランス公共ラジオによると、イラク中部ファルージャで続いていた占領米軍とスンニ派抵抗勢力との停戦は同日午後9時(日本時間午後2時)から、さらに延長された。停戦交渉を仲介しているイラク・イスラム党の幹部によると、「停戦の延長は、米軍の方位で閉鎖を余儀なくされた市内の2病院を再開させるのが目的」と語った。AP通信の独自集計によると、イラク全土で4月4日以来、イラクの死者は計880人となった。また米軍兵士の方は62人、米軍以外の連合軍兵士2人が死亡した。(共同ニュース2004年4月14日)

これはもはや戦争というよりは、ファルージャ村の惨殺である。死傷者のなかに相当数の女子供が入っている。ニュースでは戦争のように報道されているが、イラク人の尊厳を賭けたローテク抵抗闘争といえる。俺たちはアメリカ人の牛や家畜じゃねぇ、といった思いである。そもそもこのファルージャに火が点いたのは3月末、米国人4人が惨殺される事件が発生し、その映像が全米に流れてからである。( ワシントンポスト・カメラワークス

この残虐な殺され方をしたアメリカ人4人の映像が、待ってましたとばかりに全米のゴールデンタイムに流されたのは、今後の長引くイラク戦争を自国のアメリカ国民に納得させるために、その残虐性を極める映像が何よりも必要だったようである。アメリカのイラク占領企業の社員4人が乗った、いかにも占領軍の車であることが明白である白の重武装SUVが銃撃され、手りゅう弾を投げ込まれて炎上し、さらに黒焦げになった死体は、市内を引き回されたあげくにユーフラテス川の橋に逆さにぶら下げられるという、その何時間も延々と続いた騒乱の間中、近くにいたアメリカ軍部隊がまったく何もしなかったようなのだ。そして例のごとく映像カメラだけはバッチリ待機させてあるのである。なんとも不思議なやり方である。( 参考記事

ようするに、ブッシュはこのチャンスを待ち望んでいたのである。これでイラクに4000人規模の米国大使館、10万人以上の米軍長期駐留プランを実現する「大儀」を手にすることができるし、あわよくばイラク人との激しい抵抗闘争によって主権移譲が崩壊し、イラクをアメリカが直接統治できる方向に持っていけるのだ。中東の石油資源確保というアメリカの未来戦略にとって、これほど美味しい流れはないのである。イラクへの主権移譲と民主化はあくまでアメリカの「建前」であって、本音は傀儡政権による直接統治である。そのための、アメリカの中東「混乱」戦略なのである。

はっきり言ってアメリカは昔からこういった戦略が得意であり、伝統なのである。必ず最初に相手を屈辱的な状況に追い込んで先に手を出させておいてから、待ってましたとばかりに一気に反撃にでる巧妙な手法なのである。真珠湾に於ける約2000名のアメリカ海軍しかり、アラモの義勇軍しかりである。

このアメリカのやり方は、専門家のあいだではもはや有名である。そしてイスラエルのシャロン首相も、そっくりこの手法を真似ていて、パレスチナをとことん追い込んで幾つもの自爆テロを起させておいてから、一気にハマスの精神的指導者ヤシン師殺害(67歳)と「中東和平ロードマップ」を御破算状態にすることに成功したのである。

いまや大儀を手にしたアメリカ占領軍は、アメリカ民間人4人殺害犯人逮捕を名目に、5日からファルージャ一帯を包囲し、激しい掃討作戦を展開し始める。そして7日昼、アメリカ海兵隊はハイテク攻撃ヘリ「コブラ」から民間人のいるモスクに対してミサイル数発を発射すると同時に、さらに航空機から精密誘導爆弾を投下して爆破した。

宗教施設を攻撃するのはジュネーブ条約違反である。アメリカ軍当局者によると、モスク内のイラク人約40人が死亡した。そしてモスク内に武装勢力が立てこもっていたと主張しているが、現地情報によると、空爆当時は一般市民が礼拝のためにムスクに集まり始めていたという。キミット准将は、「モスクの敷地内に武装勢力がいる場合は攻撃対象になりうる」といいながらも、周りの反応が市民虐殺という目になっているためか、あわてて先の40人死亡を、死者は民兵一人だったと変更している。

カタールの衛星通信テレビ、アルジャジーラは13日、イラクをめぐる抗争報道に対して、占領当局(CPA)から脅かしがある、として批難している。ようするに、イラク駐留アメリカ軍のスポークスマンであるキミット准将が12日、アルジャジーラやアルアラビーヤをはじめとするアラブ・メディアを「反連合軍的」であるとし、視聴者にこれらの放送を見ないように呼びかけたのだ。つまりアメリカ当局は世界の世論をめぐる戦いにも力を注いでいて、自由な取材を制限し、記者に対する情報も厳しく管理している。アルジャジーラは「これは報道の自由に対する不当な圧力だ」と主張した。( 参考記事

日本人人質3人をめぐる「錯綜する情報」

とにかくアメリカ軍は、ファルージャで子供や女性を含めた大量殺戮を実行している。そしてそのことを伝えるアラブ・メディアの報道をなんとしても妨害したいようである。そしてイラク占領当局のセナー報道官も、ファルージャへの援助物質の輸送をアメリカ軍が妨害しているとか、イギリス軍キャンプで多くのイギリス兵が殺害されたといったアルジャジーラの報道等は、まったくの誤報であると不快感をこめて反論している。

こういったメディアの規制と混乱のせいで、イラクにおける日本人人質の真相を把握するのは至難の業である。そうこうする内に、15日にまた日本人ジャーナリスト2人が武装グループに新たに拘束された。この混乱したイラク状況の中で、いま私の意識に引っかかっているのは、あのチェイニーが日本にタイミングよく来日したことである。そして表向けの建前として日本人人質3人の情報提供の約束をしていったのである。

これもよく考えてみると不思議な流れである。イラク人による非力な反占領闘争を補う手段としての「人間の盾」戦略なのに、その憎しみの張本人であるネオコンの首謀者に近づいて一体なんの利があるというのか。普通に考えるなら、武装勢力とのまとまる話もまとまらなくなる流れのはずである。私は、ここにすべての「謎」が隠されていると思う。

一方川口外相は10日に武装勢力「サラヤ・ムジャヒディン」に3人の解放を求めるビデオメッセージを出している。川口外相が収録したビデオメッセージの全文は以下の通り。

イラクで日本人3人を人質にしているサラヤ・アル・ムジャヒディンのメンバーへ。

 私は日本の外務大臣の川口順子です。日本国民全体が3人の人質が一刻も早く解放されることを待ち望んでいます。あなた方が人質にしている3人は、純粋の民間人で、イラクの友人です。高遠菜穂子さんは、たびたびイラクを訪れ、子供たちの医療と教育に取り組んできた方です。今井紀明さんは、何年も前から、イラクの人々の戦争被害の問題に取り組んできました。郡山総一郎さんはイラクの人々の生活を日本に伝えてきたフリージャーナリストです。その3人を人質にしたことについて、日本の国民は驚きと怒りを感じています。

 日本の国民は、イラクの人々に敬意と友情を持っています。日本は、長年病院や学校の建設などで積極的に協力してきました。今も、多額の資金と人員をもってイラクの復興に取り組んでいます。我が国の自衛隊もこのために派遣されているのです。

 私たち日本の国民は、3人の人質が一刻も早く安全に解放されることを強く求めています。 (04/11 00:04) 参考記事

このビデオメッセージのなかで川口外相は、ドサクサにまぎれて、「自衛隊もこのために派遣されているのです」と無神経な言葉を挿入しているために、人質の家族は、自衛隊の部分は犯人側を刺激する可能性があるので削除して欲しいと頼んだのだが、外務省は同意せず、そのまま海外の英BBC、米CNN等で放映されてしまったのである。そして結果として人質の24時間以内の解放はなくなったのである。

その上イラク聖職者が、この人質事件の武装グループに対して小泉首相が無神経に「テロリスト」と読んだことが人質の解放の遅れにつながっていると指摘していることについてマスコミが触れると、「人質、誘拐は卑劣な、許されるものではない犯行なので、認められない」と堂々と小泉首相は反論してみせている。( 参考記事

何だか人質3人の命が危機に瀕することはありえない、と思っている自信たっぷりの態度である。そういえば、どこのメディアも人質3人の生命はどうやら保証されているらしい、となんの根拠も示さないで何故か繰り返していた。そして新たなジャーナリスト2人人質事件が発生した同じ日15日の夜に、まるでバトンタッチするように人質が解放されたのである。つまり最初の3人の人質の役割は終わったということである。

とにかく3人の人質が解放されたことはとても喜ばしいことである。なのに、どこかすっきりしない流れである。おそらく多くの国民もそう感じているにちがいない。今後もイラク情勢は果てしなく「混乱」していくことだけは間違いない。そしてこのあらゆるメディアをひきつけた「人質解放劇」で動いた「大金」をまんまとせしめたのは、決してイラクのファルージャで戦っている「抵抗勢力」ではないと思うのだ。 やれやれ

 

 

 

《主な参考文献および記事》

(本記事をまとめるにあたり、次のような文献および記事を参照しました。ここに、それらを列記して、著者に感謝と敬意を表すると共に、読者の皆様の理解の手助けになることを願います。)

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20040411id22.htm

http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=intl&NWID=2004041

201004143

http://www.yomiuri.co.jp/features/gulf2/200404/gu20040408_01.htm

http://www.reuters.co.jp/news_article.jhtml?type=topnews&StoryID=4819501

 

『終』

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