パレスチナの不幸は“日本国民の不幸”
No.29【2004年4月6日】
地球に於けるイスラエルの「存在理由」
この地球上で生きている生物の基本的な力学は「生存本能」である。しかしその法則は、人間の感性でとらえると、あまりにも非情な「弱肉強食の世界」でもある。何故なら私たちが、初めて自分を意識したときには、すでに社会化された文明の価値観のなかで生きてしまっているからだ。そしてそれが消費社会であったり、資本主義であったり、法律だったり、家族関係だったり、日本の常識や伝統等だったりしている。
ほとんど無意識に常識を受け入れている私たちにとって、「弱肉強食」の力学は、むしろ違和感以外の何物でもない。ところが、昨今の現実はまちがいなくその力学で動いてしまっている。今まで私たちが受けてきた教育や感性は、世界を動かしている真実の力学をまるで把握できずに、ほとんどミスリードしてしまっている。つまり、ありもしない「夢」を、「現実」のなかで見させられているのだ。
3月24日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸ナブルス近郊のハワラ検問所で、爆弾を縫いこんだベストを着た14歳のパレスチナ少年を、イスラエル兵が発見した。少年を発見してからベストを脱がせ拘束するまでの一部始終が、不思議なことに、タイミングよく居合わせたスカイテレビやAP通信によって、あの衝撃的な少年の自爆テロ未遂シーンがお茶の間に放映されはじめる。イスラエル兵は、コンクリート防御壁の背後から銃を向けて、少年に服を脱ぐように命ずる。少年がシャツの下に着込んでいたベストがあらわになると、少年に両手を上げさせ、遠隔操作のロボットを使って、ベストを固定している針金を切断するためのハサミを少年に渡す。ベストは少年の体に針金で強く巻きつけられ、簡単に脱げなかったため、少年は「外し方なんて知らないよ」という。彼が自分で着用したしたのではないことは、見れば一目瞭然だった。両肩のストラップは肩に食い込み、爆弾を詰め込まれたベストは、彼の背中でしっかりと絞められている。
「ぼく、死にたくないよ」と少年は泣きそうに言いながら、それでもなんとか肩のストラップを切り落とす。イスラエル兵は、ベストを回収した後、少年を下着姿にさせてから、他に爆発物がないか調べる。ベストに縫いこまれた爆弾は8キロだった。そして少年のポケットには100シェルケン(約2400円)入っていて、たった100シェルケンのために、爆弾を身にまとい、兵士が集まるところで自爆せよ、命じられたらしい。殉教すれば、天国で72人の処女が待っていると言われたらしい。あの世へ行って女でも買えってことなのか。
そして少年の行動について、パレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハの武装部門タンジームが声明を出した。もし本当にアルアクサがやったのなら、アラファトの「3日間の喪に服する」という支持を無視していることになる。ということは、アルアクサの首謀者が、イスラエルと通じているということかもしれない。(参考記事
asahi.com 3月25日)
母親は息子の逮捕を聞かされて「今朝いつも通りに学校に行ったのに…こんなのはひどい。子供をこんな風に利用するなんて、許されない」と怒りをあらわにした。少年の兄は、少年はイスラエルへの攻撃なら何でも応援したが、特定の武装集団とは関係していなかったと語る。しかし、少年が前日、いきなり家族や近所の人たちにお菓子を配り始め、理由を聞かれても答えなかったのが、いつもと違っていたという。
さらにアルジャジーラは、こんな風に疑問点を取材している。イスラエルによると、スカイテレビやAP通信が流した映像は、たまたま偶然に、報道スタッフがそこに居合わせたことで撮れたことになっているが、例のごとくヤラセがあったようであると報道している。また、なぜ2時間以上も前から、準備したTVカメラがその場所にあったのか、この疑問を、イスラエルの陸軍広報官に回答を求めたが、イスラエル軍は、いつまで待ってもアルジャジーラに答えようとはしなかったらしい。
またイスラエル軍が「パレスチナ過激派が子供を使って爆弾を運ばせた」という当の子供を、アルジャジーラは独自に取材した。すると、子供が家に帰ったときに家族に言った言葉は、「ユダヤは爆弾を持っていくように僕に命令した。さもないと殺す」だったのだ。ようするに、AP通信もスカイテレビも、イスラエルに味方したインチキ情報を流していた、ということになる。(
参考記事
)
イスラエルにとっては、「中東和平ロードマップ」を2005年までに破棄するために、あえてパレスチナとの抗争が激しくなるように自作自演しなければならない宿命にある。
あえて全世界を敵にまわすサイバーネット地政学 でも書いたが、「イスラエル領土拡大戦略」には、パレスチナを始めとするアラブ諸国に常に火種を作っておかなければならない。パレスチナが武装集団から国際主権国家として認められてしまったら、イスラエルは、国連の“許可”なしでは、“侵略行為”はもちろん、自爆テロに対する“報復行為”さえも不可能になってしまうのだ。
もちろんアラブを「不安定」にするシャロン首相の過激なシオニズム戦略は、ロックフェラーが支配する軍需産業やエネルギー企業にとっては、アラブの憎しみをうまくかわせて好都合なのである。その上中東に「混乱」が長く続けばつづくほど、イラクのように生活水準が下がることで1バレルあたりのオイル単価が相当安くなるし、アメリカの軍隊をイラクに置き続ける「大儀」をも手にすることできる。そしてサダム・フセインが石油決済をユーロで行ない始めたことでドミノ化したアラブ諸国のお金を、もう一度アメリカの「ドル機軸体制」に引き戻すことが可能となるのだ。
いつも言っているように「テロとの戦争」が激しくなればなるほど、テロリストの温床といわれるサウジアラビアの立場が弱くなり、いつ何時アメリカ軍からテロリストを匿っているとかの難癖をつけられて、いきなり「報復」されかねないのだ。イスラム国家集団であるOPECを主導するサウジアラビアは、政情不安という「混乱」を避けるために、仕方なくユーロから再びドルにシフトせざるを得なくなる。
ようするに、アメリカの先制攻撃によるイラク占領の狙いはすべてここにあった。アラブ諸国やパレスチナにとって不幸なのは、ロックフェラー等の支配者に巧みに利用されて、シャロン率いるユダヤ原理主義とブッシュの信奉するキリスト教原理主義という二つのカルト集団が絡んできてしまっているからだ。
そのひとつは、3000年も前に書かれた旧約聖書による「約束の地」である。だからパレスチナからイスラムを追い出すのは当然であり、ユダもサマリアもガザもユダヤの母なる大地であるから、ほんの一握りの土地もパレスチナ人には渡さないと考えている異常集団であり、もうひとつは、中東にハルマゲドンが起きて全滅し、その崩壊の跡にキリスト教を信じる者だけがもう一度生まれ変わって復活し、千年帝国ができる、と本気で信じているカルト的なキリスト教原理主義集団である。
この二つのカルト宗教集団をコントロールすることで、ロックフェラー等のアメリカの支配者はOPECをもう一度ドル機軸通貨体制に戻し、軍需産業と石油ビジネスで今後20年間大儲けしようと企んでいる。もちろん中東では断トツの軍事力を持つイスラエルがあえて「危機」と「憎しみ」を自ら創造することで、アメリカは背後に隠れることが可能となるのだ。
近頃のイスラエルは、アメリカの営業マンよろしくインドに兵器をどんどん売りつけ、その隣のパキスタンには、今度はアメリカがハイテク武器を買ってもらう上手いやり方である。おまけに、お互いの戦争状態が長引けば当然経済力が低下して、インドに於けるアメリカの情報産業は、常に安い労働力を維持することが可能となる。ようするにイスラエルの暴力的なシオニズム戦略は、アメリカのシンクタンクによるアラブ支配戦略にきっちりと組み込まれてしまっている。もちろん、そのことにイスラエル国民はほとんど気づいていない。
まあ、そんなわけでシャロン首相は、3月22日、自分に与えられた役割を見事に演じてハマスの精神的指導者ヤシン師(67)を暗殺した。この事件で、私は直感的にブッシュの再選はすでに裏側で決まっているな、と確信したように思う。シャロンは、新たな中東戦争の幕を切って落とした。自らハイド氏としての悪魔役を堂々と買ってでて、新たな「テロとの戦争」の主役に踊り出てきたのである。
一方ハマスの政治部門は、3月24日、ヤシン師殺害の報復として、暗殺の主犯アリエル・シャロンを攻撃のターゲットにしたことを宣言した。シリアを活動拠点とするハマスのハーレド・マシャールがハマスHPで宣言したもので、その内容は「ヤシン師の報復として、シャロンがパレスチナ抵抗闘争のターゲットとなった。敵が最初に我々の主導者を狙った。我々もユダヤ主義の主導者を狙う権利がある」としている。これでイスラエルのシャロンは、ついに≪シリアを攻撃する≫口実を手にすることができたことになる。もちろんイスラエルの背後で、アメリカはウズウズしているのだ。イラクを手に入れたアメリカの次のターゲットはシリアだからだ。
アメリカがシリアを手に入れて、イラク石油のパイプラインをシリアに通すことができれば、スエズ運河を通さずに地中海に直接運ぶことが可能となる。スエズ運河を通らなければ、巨大タンカーで石油をアメリカやヨーロッパに運べる故に、一気に中東石油の安定供給につながる。そうなれば石油関連会社、或いはそれに投資しているカーライル投資会社を通じてブッシュ政権が潤うことになり、その潤沢な資金を使って、ブッシュは11月の大統領選を有利に運ぶことができる。そのためには、アラブの「破壊」と「暴力の連鎖」がどうしても必要となる。
いまシャロンは、自分に与えられた世紀の悪魔の役割を、見事なタイミングで演じたことになる。そして、そのハマスのヤシン師が殺害された同じ3月22日、とてもタイミングよくアメリカを訪問したシャローム・イスラエル外相は、チェイニー副大統領、パウエル国務長官等ブッシュ政権幹部と相次いで会談。チェイニーとの会談後、シャロームは、記者団に「ヤシンは自爆テロのゴッドファーザーだ」と言い切り、ヤシン殺害の正当化をした。またハマスの考え方はアルカイダと同じである、とも語った。またシャロームは、シャロン首相の和平構想についてパウエルと会談し、「いい議論ができた」とさも満足げに語った。
一方アメリカ高官側もまるで口裏を合わせたかのように、暗殺に関するイスラエルからの事前の打ち合わせはなかった、と発表している。あくまでイスラエルだけの単独判断による暗殺との報道であるが、もし事前にアメリカが聞いていなかったのなら、アメリカが仲介して始まった「中東和平ロードマップ」を一方的にイスラエルが破棄する行為なのだから、本来なら、アメリカとしてその裏切り行為に、何としても抗議しなければならない立場にあるはずである。ところがチェイニー等の首脳会談でも、さも和やかな雰囲気のもとに会談が進行した模様である。なんとも不思議な流れである。
アメリカの不沈空母戦略と石破兵器オタクのヨダレ
日本・アメリカの両政府は、3月24日、日本政府が導入予定のミサイル防衛(MD)システムめぐり、北朝鮮等から発射された弾道ミサイルに対して、日本とアメリカが協力してレーダー情報を共有し、迎撃ミサイルで打ち落とすための情報通信網を構築する検討に入った。このミサイル防衛システムは、はっきり言ってしまえば、アメリカの国防を日本に担わせることで、敵の攻撃目標を日本に向けることができる仕組みのようである。日本の防衛を、アメリカ防衛システムの官制化に置くことで、完全に日本の軍事力を無力化することが可能となり、永遠にアメリカの奴隷軍にすることができる代物といえる。
もともとこのミサイル防衛システムは、約824億ドル(約9兆円)もかけて未だに不完全な代物で、さらに1兆ドルかけても、恐らくまともなものにはならないと言われている。アメリカとしては、もし日本が積極的にこのミサイル防衛システム開発計画に参加してくれれば、莫大なMD開発資金の大半を日本に負担させることができるし、他のアメリカの同盟国もこの計画に参加してくれるようになる。さらに、もしこのMD開発がうまくいった場合、日本の先端技術もアメリカのものとすることができるのだ。こんなふざけたミサイル防衛構想に、約1兆円もの国民の貴重な血税がつぎ込まれようとしているのだ。(
参考記事
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さらに悪いことに、ロシアの新型ミサイルは、ロシア軍スポークスマンのバルエフスキー参謀第1次長が2月19日にタス通信に語ったところによると、打ち上げ後に軌道や高度を変更できる「飛行装置」を備えていて、弾道ミサイルの軌道を予測して打ち上げる迎撃ミサイルを、ほとんど無力化してしまうタイプなのである。さらに付け加えて同次長は「18日の新型ミサイルの実験については、アメリカに事前に通告してある。アメリカが驚くことになるのは間違いない」と語ったようである。(
参考記事
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そもそも北朝鮮が脅威だというありもしないファンタジーを1年間も言い続けて、ようやく日本政府は、ミサイル防衛システム導入に約1000億円の契約を、2004年度初期整備費としてアメリカと結ぶ方針を固めることができたのだ。これが、国民の年金給付を引き下げようとしている小泉政権のやり方である。
そういえば、昨年の11月20日から都内で開催されt「第2回日米安全保障戦略会議」では、日米防衛産業のブースがズラリと並んだ。アメリカ側は、ボーイング、ロッキード・マーチン、ノースロップ、レイセオン。イージス護衛艦用スタンダードミサイル(SM3)やパトリオットミサイル(PAC3)の実物大模型も展示されていた。
そしてMD導入の日本側の推進役は三菱重工業。三菱の防衛庁納入主力商品F2支援戦闘機はもうすぐ生産を終了し、MDにかけるようである。三菱は、PAC2をライセンス生産で防衛庁に納入実績があり、2年ごとにモデルチェンジするMDは、なんとも魅力的な商品なのだ。しかも日本企業がライセンス生産する兵器は異常に高く、むしろアメリカから直接購入した方が安いようである。すでに防衛庁幹部は「SM3,PAC3、共にライセンス生産で導入したい」と三菱重工業への発注を匂わせている。
この流れからいくと、日本の憲法9条なんて、兵器オタクの石破防衛庁長官のヨダレを拭くティッシュペーパーのように、あっという間に使い捨てにされてしまう可能性大である…。どうやら、あらゆる場所で物質資本主義の「エゴ」が、独りよがりな「罠」を仕掛けているようである。
たとえそうだとしても間違いなく希望はある。たぶん、私のこのコラムの役割は、「エゴ」が創り上げた様々な「幻想」をひとつひとつ剥いでいくことのようである。それらの幾重にも交差した虚構の「罠」から自由にならないと、本当の自分のために、私たちが何をやらなければならないのか、さっぱり見えてこないからだ。だから、最初に「幻想」からの自立ありきなのだ。それさえ私たちが分かってしまえば、そのひとりひとりの意識の繋がりである日本の「こころ」が、その霊的なエネルギーによって、必ず明るい未来へ自らを軌道修正し始めるにちがいない。
《主な参考文献および記事》
(本記事をまとめるにあたり、次のような文献および記事を参照しました。ここに、それらを列記して、著者に感謝と敬意を表すると共に、読者の皆様の理解の手助けになることを願います。)
★ X−ファイル 悪の戦略 その26
<凶悪の館>
http://atfox.hp.infoseek.co.jp/xfile/aku26.htm
★ X−FILES 2004 政府らによる恐怖と洗脳の世界 P.15
http://atfox.hp.infoseek.co.jp/xfile/2004/015.htm
『終』
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