予言どおり同時多発テロ季節の到来
No.27【2004年3月19日】
ブッシュの予想を裏切った3.11マドリッド列車同時爆破テロの誤算
3月4日のNo.25のコラム“
いよいよブッシュ再選の「ビンラディン拘束劇」が開幕す る”でも書いたように、3月に入ると同時に、急激に世界が「混乱」し始めている。3月2日にイラクのバクダッドとカルバラ、さらにパキスタンのクエッタでもシーア派祭礼を狙った悲惨な同時多発テロが起きたばかりだというのに、3月11日夜に、なんと今度はスペインのマドリッドで列車同時爆破テロ(この3.11マドリッド同時爆破テロは、奇妙なことにというべきか、9.11同時多発テロから数えてちょうど911日目)が起きたのだ。スペイン政府は、死者は192人、負傷者は1421人にのぼったと発表した。
またしても衝撃的で、かつ暗示的な事件である。なのに、まるで同時爆破テロが日常的な出来事であるかのように、現実を把握する私たちの感性のバランスが歪んでしまったのか、下手をするとついそんな風に私たちは感じてしまいそうである。21世紀以前には、こんな衝撃的な事件は、一生のあいだに何度も起きなかったように思う。
9.11の同時多発テロ以降、ブッシュ大統領が「テロとの戦争」を高らかに宣言してから、何故かしら世界中でテロがもの凄い勢いで頻発するようになっている。いや同時多発テロや戦争ばかりじゃなく、イラクや北朝鮮やパキスタンやリビアやインドやハイチやイラン等の国の政治状況もかなり「混乱」してきているのだ。気味が悪いくらい、私の予感通りの流れである。この流れでいくと、やはり
夏の参院選の前後に、私の予言通り 何かが起こる可能性が高い…。
スペイン列車同時爆破テロに話を戻すと、国際テロ組織アルカイダ系の「アブ・ハフス・アル・マスリ隊」を名乗る犯行声明が同日、ロンドン発行のアラブ圏有力紙に届き、イスラム過激派が関与した可能性も浮上している。スペインのアセベス内相は同日、マドリード郊外アルカラで起爆装置7個とイスラム教の聖典コーランの録音テープを積んだ盗難車が発見されたと発表した。
アセベス内相は、「バスク祖国と自由」(ETA)による犯行の可能性が最も高いとの認識を改めて示した上で、「捜査当局には、あらゆる可能性を排除するべきではないと支持した」と述べた。一方、アラブ圏有力紙「アル・グドゥス・アル・アラビ」に電子メールで届いた声明によると、「死の部隊がヨーロッパの深部に浸透し、十字軍の柱のひとつであるスペインを攻撃し痛打を与えることに成功した」と述べると同時に、「スペイン首相よ、アメリカはどこだ。誰がお前をわれわれから守ってくれるのか。イギリス、日本、イタリア、そのほかの協力者か」といった具合に、日本にも言及している。(
参考記事
読売新聞3月12日 )
さらにアセベス内相は14日未明、緊急記者会見を開き、列車同時爆破テロの件で、国際テロ組織アルカイダを名乗る男が犯行を認めたビデオテープが13日、匿名の電話で見つかったと発表した。アセベス内相によると、ビデオには、アルカイダの欧州の軍事スポークスマンを名乗るアラブ風の服装の男が映り、モロッコなまりのアラビア語で、「ニューヨークとワシントンで起きた9.11同時多発テロからちょうど911日目に起きたこのマドリッドの事件は、我われの責任だと宣言する」と語っている。
そのモロッコなまりの男は、今回のテロについて「犯罪者ブッシュとその同盟国に、スペインが協力したことに対する返答だ。とくに、イラクとアフガンニスタンで犯した罪に対するもので、神が望めば、さらにテロは起きる」といい、スペインがイラク戦争等でアメリカに協力したことが理由だとしている。そのビデオテープは、マドリッド市内のモスク近くにあるゴミ箱から見つかった。アラブなまりの男から13日、市内のテレビ局に電話があり、テープのありかを具体的に語ったため、同局が警察に通報して発見された、ということだ。
アセベス内相は、同事件の実行犯について、スペイン政府と同捜査当局は発生直後から、同国固有のテロ組織「バスク祖国と自由」(ETA)が有力とに見方を強めていたが、今回のビデオの発見が、いままでの政府の立場に疑惑を与えるのは確実のようである。(参考記事
読売新聞3月14日
)
もしアルカイダの犯行であった場合、イラク戦争に反対した国民世論が再燃し、テロを招いた現政権への批判が一気に強まると思われる。
14日に行なわれた総選挙では、野党の社会労働党(PSOE)が第一党に躍進し、中道右派の与党国民党(PP)を破った。事前予測では与党有利だったが、テロをめぐる国民の不安が与党批判にまわる結果となる。バスク独立派(ETA)による犯行説を強調してきた与党に対して、「情報を公開していない」とする政府批判が急速に高まり始めたことが、どうやら有権者の動向に影響したようである。
その流れで次期首相となることが確実な社会労働党ロドリゲス・サパテロ書記長は15日、イラクの状況が6月末までに変化しなければ、約1300人のスペイン駐留軍を撤退させる方針を明らかにした。またAPA通信によると、サパテロ書記長は、ブッシュ大統領とブレア首相がイラク戦争を進めたことについて「自己批判する必要がある」と述べたようである。(参考記事
読売新聞3月15日
)
これらのことからまず気になるのは、スペインは、日本・イギリスと同じようにイラク開戦においてアメリカ支持をいの一番に打ち出した「米国有志連合」のひとつだということである。つまり国際法上、アメリカのイラク侵略を明らかに支持したことによる「イラク侵略国」なのである。それ故にイギリス・スペイン・日本等の国は、今や国際テロ組織であるアルカイダから「テロの標的」として名指しされているわけなのである。小泉首相は「スペインの選挙結果に左右されない」と強気な発言を今のところ述べているが、内心はかなり動揺しているように感じられる。
このマドリッド列車同時爆破テロが、9.11テロと同じようにマッチポンプ臭さを感じるのは、盗難された車の中に、携帯電話で爆破を誘導できる起爆装置やイスラム教の聖典コーランの録音テープが、あまりにもタイミングよく発見されたからである。もし私がアルカイダのテロ実行犯なら、すぐに身元がばれてしまうような証拠は絶対に残さない。こんな大規模なテロを実行することが可能な訓練されたテロリストなら、あまりにも当然のことである。
ようするに、犯人を特定しやすいように、わざわざ現場に証拠を残しているとしか思えない展開である。真実の犯人がいるとしたなら、それはスペイン首相自らが報道関係に直接電話してまでも犯人に仕立てたかった『バスク祖国と自由』(ETA)でもなく、あまりにも幼稚で見え見えの証拠が残されている国際テロ組織『アルカイダ』でもないのだ。
私が思うに、国際テロ組織『アルカイダ』の「存在」そのものが創られた「ファンタジー」である可能性が高いし、仮にその「存在」を認めるにしても、CIAやモサド等の別働隊である可能性が高いように思う。世界の政治力学は常に「右」と「左」、あるいは「悪」と「正義」に白黒をつけたがるが、はっきり言ってそのどちらにも真の犯人はいない。本当の真犯人は、常に「右翼」と「左翼」を意図的に創りだして対立させて“混乱”を演出している目に見えない勢力、或いは「ならず者国家」や「悪の枢軸」や「テロとの戦争」を口実に、すべての国に対して先制攻撃も辞さない「正義のカウボーイ国家」という枠組みを対立させることで、とりあえず、世の中をコントロールしようとしている目に見えない勢力こそが、つまり本当の真犯人なのだ。
彼らは、国家を超越した少数の国際金融財閥たちで、「石油」と「市場主義」と「原理主義」と「ドル」と「ハイテク武器」と「麻薬」等のツールを巧みに操ることで、蜘蛛の巣状に世界の『属国』を隷属させようとしている。
イラク基本法の中に仕込まれたアメリカの戦略
イラク基本法が8日、曲折を経て制定された。しかし、6月末の主権返還後の受け皿である暫定政権をどうつくるかという肝心な点は先送りされ、大統領評議会の体制やクルド陣営優遇政策と受け止められる「拒否権条項」など、多数派のイスラム教シーア派には不満がくすぶる流れである。基本法は大統領評議会について、大統領1人、副大統領2人で構成するとしている。シーア派議員は、同評議会は5人で構成すべきであると主張していた。同派は人口の60%を占め、5人制となれば人口比に応じてシーア派から3人を送り込めると計算していたようである。
ところが3人制ではシーア派とスンニ派、クルド人にそれぞれ割り振られることになる。さらに大統領評議会の決定は全会一致が必要とされ、「数の論理」でシーア派が主張を通せない仕組みとなった。また恒久憲法草案は2005年10月15日までに実施される予定の国民投票で承認される、と定められた。だが、全18州のうち3つの州で反対票が3分の2を占めれば無効になるという条項が基本法にあるのだ。
湾岸戦争後、スレイマニア、アルビド、ドホークの北部3州はクルド人が旧フセイン政権の支配を離れ、実質的な自治区を形成してきた。この条項は明らかに少数のクルド人優遇措置となっている。いずれイラク国民の中に、統治評議会を通じてアメリカにいいように騙されたというような認識が芽生えれば、一気にその権威が崩壊してしまう危うさをはらんでいる。(参考記事
asahi.com3/10
)
つまりこの基本法には、アメリカによって意図的に混乱が生じるような「仕組み」が組み込まれている。その重要な基本法を作成したのは、アメリカが自ら任命した25名からなる統治評議会なのだから、アメリカの意のままの基本法がつくれるわけなのだ。だから、表向きイラク人自身による新政権が発足しても、現実としてテロや内乱が続けば、秩序を維持する軍隊が必ず必要になる。そういうことであれば、イラクに駐留しているアメリカ軍が、そのまま残留する「大儀」が生まれることになる。
イラクの政情が安定し、本当に新しいイラクの民主政権が生まれてしまったら、アメリカ軍がイラク国内に滞在する根拠がなくなってしまうことになる。もしそんなことになれば、イラクの石油も手に入らなくなるし、国連を振り切ってまではじめたイラク侵略の意味がまったく崩壊してしまうことになる。そればかりか、今後サウジアラビアやシリアをも同じように民主化して、OPECを支配下におく計画までもが水の泡に帰してしまうことになる。
もちろんそうならないために、評議会を完璧に操って、今回の基本の中に「混乱」の種としての“時限爆弾”をうまく仕込んだようである。こう言ったところが、やはりアメリカのアメリカたる所以であり、日本人の感性とは“異質”のものである。
9.11以来、アメリカは「テロとの戦争」を世界に向かって宣言して、自分勝手に世界のすべての国々を軍事的に管理する“帝国”になってしまった。ところが、OPECはイスラム国家の集団であるから、アメリカという国に今までのようにお金を預けておくと、いざという時すべてアメリカに押さえられてしまうことになる。そういった流れを恐れて、保険的な意味も含めてアラブのお金がユーロにシフトし始めたのだ。もちろんアメリカが国連を無視してまで強引にイラク侵略を決行した最大の理由も、サダム・フセインが石油決済をユーロで行ない始めたところに原因があるのだ。
アメリカのドル基軸通貨体制を守るために、サダム・フセインを引き摺り下ろしたのであり、そういう意味でアラブのお金がこのままユーロにシフトしたままに放置しておくことは、ネオコン主導のアメリカ帝国には何としても許されないことなのである。アラブ諸国のユーロにシフトしたお金を、もう一度世界通貨システムの唯一の権威である“ドル基軸通貨体制”に引き戻すために、アラブの石油産出国であるイラクはもちろんのこと、サウジやイランやシリア等で「テロによる混乱」がひっきりなしに勃発してもらわなければ困るのだ。
なんども繰り返すが、「テロによる混乱」が起きれば起きるほど、テロリストの温床といわれているサウジアラビアの立場が弱くなり、もしかしたらアメリカ軍から「ならず者国家」に指定されて、いきなり“報復”されかねない立場に追い込まれてしまう。サウジアラビアにとってそれだけは避けたい。となると、政情不安という“混乱”が中東全体に飛び火することを避けるために、OPECは、仕方なくユーロから再びドルにシフトせざるをえないことになる。つまり、そう言うことなのだ。
世界最強のカウボーイに「平和」は似合わない?
最近の世界の国々に対するアメリカの姿勢は、傲慢そのものであり、エゴイズムが極限に膨らんだ単独行動主義(ユニラテラリズム)そのものである。世界のあらゆる場所で“混乱”の火種を自ら仕組んで、その混乱を沈めることができるのは「最強国アメリカ」しかいない、と吹聴しまわっているような具合である。まさに「パックス・アメリカーナ」そのものであり、かつての包容力や洗練を、今のアメリカは惜しげもなく切り捨ててしまっている。
そんなアメリカの変身に、世界も少しずつ気づき始めたようである。アメリカの権威ある世論調査機構「PEW」の2004年3月17日の発表によると、アメリカによるイラク戦争発動後のこの1年、イスラム諸国とヨーロッパ諸国は、アメリカの反テロにおける動機に疑問を抱いている。『PEW』が世論調査を行なった結果、モロッコ、ヨルダン、パキスタンとトルコ4国の多くの国民は、「アメリカのいわゆる反テロ戦争の目的は、世界を支配し、中東地区の石油を制御することにある」と認めています。
また、フランスとドイツの多くの国民、及びイギリスとロシアの半分以上の国民も、「アメリカのテロリズム撲滅の動機は、怪しいところがある」としています。(参考記事チャイナ・ラジオ・インターナショナル2004
/ 03 / 18)
最後に、ネオコンの旗手ロバート・ケーガンの著書「力と楽園について(
OF PARADISE AND POWER )」の中から一部引用することで、このコラムを締めくくりたい。
「ソ連と国際共産主義の脅威があったためにアメリカは自制し、洗練された自己利益の一環として外交政策を比較的寛大なものにするよう、とくにヨーロッパに対する外交政策を寛大なものにするよう心がけてきた。冷戦が終わると、こうした自制をアメリカがする必要がなくなった。アメリカが冷戦期と同じように外交政策で気遣いを尊重するには、以前より、よほど理想主義者にならなければならないことになる」
『終』
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