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嘘つきはブッシュだけなのか No.222004年2月14日

“雪”に封じ込められた世界

私たちが毎日生活しているのは、“確かな現実”というリアリティの上で行なわれていると考えている。多くの国民は、当然そう考えている。ところが、現実のリアリティというものは、常識という曖昧な「集団幻想」(詳しくは コラムNo.12のサブタイトル『無のささやきこそ現実』 )に過ぎないのだ。その「集団幻想」に封じ込められた中で生きていくことが、私たちの“生活”であり、“人生”なのだ。つまり、私たちにとっての「現実」とは、柵に囲いこまれた中で育った羊がその小さな柵の中だけを世界と勘違いすることと、まったく同じである。その時その場所の常識という「目に見えない柵」に封じ込められて私たちは生きている。

ようするに余程のことが起こらない限り、その封じ込められた「集団幻想」の中で私たちは一生を終える。人生とはそういうものかもしれない。しかし、さすがにそれが一番幸せなのだ、という今までの単純で安易な暗示だけでは、もはや平成の私たちの感性は納得できなくなってきているように感じる。そんな風な素朴で大まかな暗示だけでは、安心して人生を過ごせなくなってきているように思う。物質資本主義のプロパガンダ社会に住んでいるとはいえ、私たちは、決して初心でも素朴でもないからだ。それに世の中を動かす上層の支配層のやり方が、最近なんとなく雑になってきていて、妙に粗が目に入って来てしまうような時代になりつつある。

このコラムを書いている私が住んでいる北陸地方に、ほんの数日のうちに、近年にない雪が降り積もった。二十数年前の大雪のときは、降りしきる牡丹雪によってライフラインを封じ込められるままに、「選択の余地がない」という雪国の環境に気持ちも押しつぶされて、春が訪れて雪が解けてくれるのを、たたじっと耐えていたような気がする。それが雪国の普通の生活だったのだ。

しかし今はちがう。暖冷房の完備された頑丈な家に住んでいるし、道路のほとんどに融雪装置が完備されているから、生活空間が雪に封じ込められるという感じはまったくなくなっている。人間の経験と知恵が、環境をコントロールし、いつしか過酷な冬を、四季を楽しめる優しい環境に変えてしまっている。

そういう視点に立つなら、冷戦後、突然アメリカに、東洋の異質で油断のならない仮想敵国にみなされて、80年代末から現在まであらゆる経済戦略と見事なプロパガンダによって封じ込められ続けて来た日本の状況にも、御用学者がいつも言っている「日本には選択の余地がない」なんていうプロパガンダにいつまでも封じ込められて、私たち国民が耐えてばかりいる必要はないのだ。小泉純一郎の「改革には痛みが伴う。だから国民の皆さん、その間はじっと耐えてください」というふざけたお得意のプロパガンダに騙され続けてはいけないのだ。

プロパガンダからの自立

小泉首相は、完璧にブッシュ政権に盲従している。そのお手本であるブッシュ政権は、多くの国民のための政治であるように見せかけているが、実は非常にエリート主義の政権なのである。その国内政策は、少数の人々に恩恵をもたらすものであり、その人々とは基本的に少なくとも年収3150万円(1ドル=105円換算)を稼ぐ人たちで、本当は環境に恵まれない国民にまるで関心がないのである。

ブッシュ政権の政治基盤が強力な特定利益団体に支えられていることは事実である。とくに顕著なのはキリスト教右派や銃規制に反対するロビー団体である。この二つの団体は、巨額な献金を集め、必要とあらば金持ちのために暴動を起す工作員さえも動員する。もちろんその政策そのものは人気がないために、事実を隠蔽する巧みなプロパガンダが必要となる。9.11テロ以降ブッシュ政権は、恐怖ゆえにアメリカ国旗の下に一般大衆を結集させて人気を急上昇させることができたが、今やその人気も徐々に下がりつつある。

ブッシュ政権の経済的イデオロギーの支柱となっているのは、ヘリテージ・ファウンデーションなのだが、それらは信じられないくらい急進的なことを述べている。アメリカが長年築き上げてきた政治・社会的制度、アメリカ国民が当然だと思い込んできた社会ルールまでも必要ないと思っているようである。

たとえばルーズベルト大統領が始めたニューディール経済政策の社会福祉と失業保険、それからジョンソン大統領がおこなったグレート・ソサエティ政策における老人医療保障等の福祉制度を縮小したいだけでなく、制度の存在そのものさえも無意味だと考えているようである。ブッシュ政権が大袈裟にぶち上げて人気を博した大減税案は、本当のところは、ネオコン(新保守主義)が長年抱いてきた目標を達成しようとするものなのである。

つまり、資産からの収入に対する課税をすべて排除しようとする動きである。それは賃金だけが課税されるシステムで、はっきり言えば、働いて得た収入には課税されるが、大金持ちが働かずに得た収入には課税されないという、まさに弱肉強食システムである。要するにネオコンはこの際に、既存の税制度の枠組みをぶっ壊そうとしているのである。もちろん巧みな“魔法”を使って国民には気づかれないように演出している。

最初は、ブッシュ政権の減税は、クリントンによるビッグバーン等の金融賭博経済で日本や中東から巻き上げた利益を、アメリカ国民に財政黒字として還元する政策だった。その後、パキスタンやイラク戦争ですべての利益を使い果たしてしまったために、減税は短期の景気刺激策という風に、いつのまにか変化してしまう。そしてその後、その目標がどうにも達成できなくなると、今度は、減税は長期的な経済成長のための支援策ということにまたもや変化した。それでも多くのアメリカ国民は、いささか困惑しながらも、ブッシュの減税政策を今でも信じているようである。

なぜなら、国際金融財閥が操る主要メディアとそのお抱え学者が、ブッシュ政権を常に褒め称え支持してきたからである。だからブッシュ政権の本当の狙いを、つい最近までアメリカ国民は受け入れることができなかったようである。

では、イラク戦争の場合はどうだったか。こちらの方は、日本人の立場からみると幾分見えやすい。ブッシュ大統領は、まるで日替わりメニューのように、そのイラク侵略の大儀を変えた。それでもほとんどのアメリカ国民はブッシュ大統領をまだ信じていた。イラク戦争は、当初アルカイダとサダム・フセインとの繋がりで正当化された。しかしそのような関係を裏付ける証拠がまるで見つからなかったために、今度はサダムの核疑惑がその理由とされた。しかしそれも徐々に核疑惑は信用されなくなった。イラクがニジェールからウランを購入したという文書も、下手な偽造でしかなかったことが明らかになる。

慌てたブッシュ政権は、「大量破壊兵器」の定義を広げて化学兵器も含むことにして、故意にその理由をぼかし始めた。それでも大量破壊兵器が見つからないために、最後には、ブッシュはイラクに民主的な政権を樹立することで、アメリカは中東地域に民主化の波を起すことが可能となるというふうに訴えはじめる。いかにも理想的な目標であるように思えたので、アメリカ国民は再びブッシュ大統領を信じることにした。

それの繰り返しなのだ。はっきり言ってイラク戦争は、9 . 11テロのずっとずっと以前から、ネオコンという急進右派の幾つかの目標の中に明確に組み入れられてしまっていたのだ。「ニュースの落とし穴」のコラムを以前から読んでこられた読者は、もうすでによく判っておられると思う。

もちろん狂牛病問題でも、日本で騒がれたときには、アメリカは日本の牛肉を輸入することを禁止して未だにそれを続けているくせに、自分のほうが同じ狂牛病のことで輸入禁止にされると、今度は“全頭検査”は異常であると日本政府に圧力をかけている。もう今のアメリカは、むちゃくちゃな“帝国主義国家”である。

何が言いたいのかというと、そんなブッシュ政権に小泉自民党政権は盲従しているのである。そして小泉構造改革は、ブッシュ政権と同じように、私たち国民を守ってきた素晴らしい税制をほとんど破壊して、ほんの一部の官僚と金持ちに減税する政策を徹底的に推し進めているのである。そのことに、アメリカのほとんどの国民と同じように、まるで日本の国民も気づいていない。小泉首相のいう“構造改革”は、日本管理を目的とした戦略外交官たちの意向に沿ったものである以上、ブッシュ政権を動かしている急進右派がアメリカ国民に対しておこなっている税金政策と、瓜二つと考えればいいのである。このまま小泉構造改革が進んでいけば、日本から“中流階級”が消えてしまうにちがいない。

以前のコラム、 アメリカの演出された「サダム・フセイン拘束劇」 No.12 の中の “小泉構造改革とは超カースト社会の実現”で述べたように、日本が世界に誇れる一番豊かな “中流階級”という 部分を、アメリカの戦略外交官の恫喝と指図どおりに、削除されてしまうことになる。その日本から奪った我われ国民の「虎の子の貯蓄」は、“為替の魔法”( 詳しくは No.20のコラムの中のサブタイトル『創られつづけてきた脅威』 )を使って、対米資金援助として永遠に吸い上げられてしまうのだ。

私たちは、アメリカの国民と同じように、国際金融財閥に買い占められたマスコミとお抱え評論家や学者の、目に見えないプロパガンダによって、“構造改革”というメディアによって創られたインチキに騙されているのである。

単に私たちは“雪”に封じ込められているに過ぎない。「選択の余地がない」という御用メディアが放つプロパガンダで眠り込んではいけない。希望は、どんな時にも必ずある…。

『終』

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