ヘルツルの夢はユダヤの悪夢 No.15【2003年12月28日】
主要メディアが烙印したがる「反ユダヤ主義或いは陰謀論」の大嘘
世界の銀行や主要メディア、それに現ブッシュ政権要人や関連シンクタンクを支配している国際金融財閥等には、確かにユダヤ人が多い。アメリカ国内では、うっかり彼らを論破したり批難したりすると、直ぐに「反ユダヤ主義者や陰謀論者」という烙印を押されてしまうような雰囲気が、どうやら常に漂っているようだ。とくに9.11同時多発テロ以降、その雰囲気はかなり強い圧力として重く漂っているらしい。
いや、むしろネオコン派(新保守主義)は、それをプロパガンダとして逆利用しているフシがあるようだ、とも聞いている。だから今もアメリカ国内の主要メディアでは、9.11テロに対する異なった解釈や、不思議な点に関する疑問をまるで受け付けない暗黙の協調体制が支配しているといえる(さすがにインターネットだけは幾分様子が違うらしい)。それで、ユダヤ人における「ユダヤ教」や「シオニズム」についての核心に触れるために、私なりに少しだけ掘り下げてみたい、と思う。
シャロンのようなユダヤ人武装集団は、アラブ・イスラム社会では侵略者という意味を込めて「シオニスト」と呼ばれている。シオニズムそのものは、ヨーロッパで迫害を受け続けているユダヤ人が、聖書にあるシオンの丘に戻って自分の故国とするイスラエル建国の思想である。ヨーロッパ在住のユダヤ人ジャーナリスト、テオドール・ヘルツルが1896年にユダヤ人国家をパレスチナに建国する考えを提唱し、翌年にスイスのバーゼルでシオニスト会議を組織して、スタートした運動である。
1948年、ナチスの虐殺と迫害を受けたユダヤ人たちがパレスチナに強引にイスラエルを建国してからは、本来そこに住んでいるアラブ人を武力で排除することがシオニズムの目的に変質してしまい、「シオニスト」はパレスチナの侵略者の代名詞になっている。簡単に言ってしまえば、ヨーロッパ人によるユダヤ人迫害の後始末を、無関係のアラブ・イスラム世界に押しつけたのが、イスラエル建国を認める一方的な国連決議だったからである。
1969年6月28日、少なからぬ正統派ユダヤ教徒のラビ(宗教指導者、律法学者)がニューヨークに集まり、「政治的シオニズム」に抗議した。同グループは2002年2月12日に再び反シオニズムの抗議集会をおこなっている。この組織は「ネトゥレイ・カルタ(エルサレムの友)」といい、1969年から毎年≪ニューヨーク・タイムズ≫に少なくとも20回以上の全面広告を掲載し、シオニスト国家イスラエルに反対の立場を明確にしている。その一部、1985年4月4日のものを、ジョン・コールマンの著書「石油の戦争とパレスチナの闇」から引用してみよう。
(転載開始)
シオニストの撤退(第20回)
『ユダヤ自身によるシオニズムへの反対が、古臭い、時代遅れのものと思われては困るので指摘しておきましょう。2002年2月にニューヨークでおこなわれたばかりの大集会には、ユダヤ教徒数万人とラビ数百人が集まり、シオニスト国家の誤りを批判し、イスラエルの存在に悲憤慷慨しました。このときのラビと信者らは、ユダヤ民族の真の代表として行動したのです。シオニストの国家を認知したり、和平条約を結んだりする者もいますが、ユダヤ民族のその最大の敵であるシオニズムと妥協することはありません。
私たちは両親からも教師からも、シオニズムは本質的にユダヤとユダヤ思想の敵だと教えられてきました。シオニストの政治的謀略は一時的に成功するかもしれませんが、長い目で見れば、その命運は尽きているのです。ユダヤ思想がこれからも存続していけるかどうかは、経済や金融や軍事面での強さではなく、ただ創造主の教えを全うすることと、ユダヤの聖典のトーラー(モーセ五書)と伝統を厳しく守ることのみにかかっているのです。シオニスト国家を強く支持しているのは、アメリカのキリスト教原理主義者たちです。それは多くのユダヤや非ユダヤが、シオニズムはユダヤ思想の現代的表現だと信じているからです。これほど真実からかけ離れたものはありません。シオニズムはユダヤ思想とはまったく反対のものなのです。
ユダヤ思想は数千年にわたり、シオニズムなしに存続してきました。シオニズムのいう「メディナ」はまったくの作り物であり、真のユダヤ思想をゆがめるものです。すべてのユダヤ教徒はトーラー(ユダヤ聖典モーセ五書)の戒律を守る義務があります。ユダヤの法に従えば、ユダヤは救世主の到来以前に自分たちの国家を持つことを禁じられています。シオニストは数十年をかけて階段を昇り、ユダヤ思想の一貫した立場とは縁もゆかりもない思想のために、ユダヤと非ユダヤの血を流してきました。
ユダヤ民族は、強力な海軍や空軍をもつという野心を抱いてはいません。私たちは、イスラエル国の防衛は実現不可能であり、望ましいことではないと考えています。シオニストは「イスラエル」という名を不当に利用し、ユダヤをはじめとする世界の民族や国家を誤った方向に導きました。他民族の征服や近代国家の建設は、ユダヤの正しい任務ではありません。私たちの義務は、他民族とともに平和に暮らし、ユダヤ思想を外来思想から守りつつ信奉し、実践していくことです。シオニストは、つねに近隣諸国を挑発する道をさぐり、ユダヤが各自の生まれた土地から追い払われるのを喜んできました。
1920年および30年代にユダヤ系アメリカ人が世界のユダヤに対して、エチオピアのユダヤ教徒であるファラシャ人救済を呼びかけましたが、シオニストはまったく関心を示しませんでした。ところが最近、ロシアからのユダヤ移民が不足するようになると、有色人種であるファラシャ人が大きな支援対象になり始めました。シオニスト指導者らは、今でこそホロコーストを大げさに哀しんで見せますが、当時の彼らは、「強壮な若いパイオニア」だけいれば問題ない、「全ヨーロッパのユダヤよりパレスチナの一頭の牡牛のほうが大切だ」と言っていたのです。
私たちはシオニストという偽ユダヤ教徒がその正体を知られるようになること、ユダヤが真のユダヤ思想を心から信じて実践し、未来の栄光を思い、未来を誠実に生きることを望み、祈っています』
(転載終了)
これはつまり、ユダヤ思想とシオニズムは同じものであるという考えそのものが誤りであることを、明快に証明している。この二つはまったく違うものなのだ。西岸地区でのイスラエルによる残虐な軍事行動のあと、キリスト教原理主義者のロバートソンをはじめとするテレビ伝道師らは、正統派ユダヤ教組織「ネトゥレイ・カルタ」がニューヨークでおこなった第2次の大規模デモを完全に無視した。宗教的立場からシャロンに反対したこのデモを、ロバートソン等キリスト教原理主義者はなぜ無視したのだろうか。もちろん2002年2月12日にニューヨークのイスラエル領事館前でおこなわれた抗議集会も、やはり主流メディアからは完全に無視された。抗議しているのが誰かということさえ意図的に伝えられなかった。掲げられていたプラカードには、以下のメッセージが塗りたくられていたという。
★「イスラエル」は世界のユダヤ民族の代表ではない。
★宗教指導者は初めからシオニズムと戦ってきた。
★正統派ラビは常にシオニズムとイスラエル国家に反対だ。
★シオニズムに聖地を支配する権利はない。
★ヘルツルの夢はユダヤの悪夢(ヘルツルは近代シオニズムの創始者)
★シオニズムはユダヤの名を盗んだ。
★「イスラエル」は世界のユダヤ民族の代表ではない。
★真のユダヤはイスラエルを認めない
★トーラーのユダヤはシオニズムとイスラエル国家に反対
★シオニズムは成功しない。
★私たちはユダヤであるからこそ「イスラエル」に反対する。
★シオニズムとユダヤ思想は対極
★イスラエル政府はイスラエル国内のユダヤ弾圧をやめろ
テレビ伝道師ロバートソン等の政治的影響力
とはいえ、残念ながら彼ら正統派ユダヤ教徒やパレスチナ人たちには、パット・ロバートソン率いるキリスト教原理主義者たちのような政治的パワーはまったくない。だからカルト宗教的傾向の強いキリスト教原理主義のテレビ伝道師ロバートソン等は、パレスチナにおけるキリスト教徒の悲惨な状況にはひと言も触れずに、テレビのゴールデンタイムにシャロンとイスラエル政府を支持するコメントを流しているために、それがあたかもユダヤ教徒のすべての考えであるかのように、アメリカ国民に捉えられてしまっている。
そして、きわめて不幸なことだが、アメリカのキリスト教原理主義者はシャロンのシオニストとしての野望と、国連および国際法の尊守拒否を支持している。その結果として、キリスト教原理主義者のひとりでもある現ブッシュ大統領は、今までシャロンに西岸地区からイスラエル軍をただちに撤退するように要求していたような場合でも、突然その要求を引っ込めてしまうことになる。それほどキリスト教原理主義者ロバートソン等の発言は、現ブッシュ政権に対して強力な政治的影響力を持っている。
本当のところは、ロスチャイルドや国際金融財閥等のユダヤ人たちは、ユダヤ教を信じるユダヤ人の、ほんの一握りの特権階級にすぎないようだ。いや、むしろ彼らシオニストは、敬虔なユダヤ教徒というよりは、ほとんど無神論者の集団に近い。そして彼ら特権階級のシオニストたちは、ユダヤ教のトーラーより、どちらかと言えばマネーやダイヤモンドや株券や権力のほうを、神々の垂訓のごとく熱く信仰しているようである。
あぁ、つまり、そう言うことらしい。
【主な参考文献および記事】
(本記事をまとめるにあたり、次のような文献および記事を参照しました。ここに、それらを列記して、著者に感謝と敬意を表すると共に、読者の皆様の理解の手助けになることを願います。)
★石油戦争とパレスチナの闇 ジョン・コールマン博士 大田 龍・監訳(成甲書房
2003)
『終』
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