テロリストが待ちわびた「自衛隊派遣」 No.14【2003年12月23日】
「日本は世界から孤立してもいいのか」という小泉狂言芝居
テロリストが今一番にやらなければならないことがあるとしたら、それは、待ちに待った日本の自衛隊を最優先ターゲットにして、大被害を与えることである。憲法9条によって戦うことを禁じられているはずの日本の自衛隊を殺傷すれば、誰が考えたって、手ごわい米英軍を攻撃するよりもはるかにやりやすいし、何よりもテロ効果として、その衝撃的なニュースに、全世界のマスコミが注目するにちがいないからだ。だから小泉首相の自衛隊派遣は、アメリカにとっては、その見かけ以上に大切な戦略的キーワードになっている。小泉首相は、ブッシュ大統領のクロフォード牧場に一泊した際(5月)に、自分の再選支持を条件に、自衛隊年内派遣をすでに約束してしまっていた。なぜならブッシュ大統領はこの時期、政治的には相当追い込まれた状況にあったのだ。
小泉がクロフォード牧場に一泊した時点では、フランス、ドイツ、ロシア等は、イラクに対してアメリカのペンタゴン主導の
CPA(連合国暫定局)が主権を握っている限り、自分たちは一切支援できないという立場を貫いていた。この状況をなんとしても打破するために、ブッシュ大統領は、アメリカ追従主義である日本の小泉を、政治的でデモンストレーションとして利用することに決めていたようだ。どんな政治的企みに、日本の小泉首相を利用したのかって?
それは、こういうことなのだ。アメリカは、国連決議を無視してイラクを先制攻撃してしまった不利な状況を、巻き返すタイミングをずっと狙っていた。そこで、イラク援助修正案が安保理で審議される前に、なんとしてもアメリカのポチ小泉から「大口無償援助と自衛隊年内派遣」の合意を早々と取り付けてしまうことで、フランスやドイツ等の欧州同盟国に一気に圧力をかける狙いが隠されていた。小泉首相は帰国するなり、その効果を知っていてか知らないでかは判別できないが、世界に向かっていち早くその支援内容を発表してしまったのだ。
その結果、10月16日に米国提出の修正決議案(1511号)が安保理で採択され、国連多国籍軍イラク派遣と、イラク復興支援の国際協力が決まってしまった。そして10月23日、マドリッドでイラク復興支援国会議が開かれて、主な支援国援助金が確定した。アメリカ2.2兆円、日本5500億円(さらに1.5兆円の原油代が非公式にあるらしい)、
EU900億円、サウジ1100億円、クェート550億円等々で、総額3.6兆円ということに表向けではなっている。実際は、裏でアメリカはもっと巻き上げているにちがいない。
さすがにフランス、ドイツ、ロシア等が、米英の
CPA(連合国暫定機構)がイラク主権をイラク国民に移譲し、国連による監督が目に見えるようになるまで、一切の資金援助も軍隊も出さないと表明しているところは、ポチ小泉とちがって、やはり相当にしたたかである。
一方小泉首相は、国連安全保障理事会が、10月16日に「イラクへの多国籍軍派遣と復興に関する決議」を満場一致で採択したことで、自分がブッシュに嵌められて先走りしてしまったことで妙に宙ぶらりんな立場に追い込まれていたのが、これで小泉首相がいつも口にしている「国際貢献」というセリフに、なんとか辻褄を合わせることができるようになったのだ。もし国連修正決議案1511が採決していなかったら、国連を無視して行われたイラク先制攻撃を支持し、アメリカの占領下に置かれているイラクに自衛隊を派遣することを、あくまで「国際貢献」と言い続けている小泉首相は、間違いなく世界の笑いものになってしまっていたにちがいない。日本以外の国は「軍隊派遣については、国連安保理が国連軍(
PKO)の派遣を決議してから、考えてみる」と表明しているにもかかわらず、小泉首相は、いつもマスコミに向かってこんな風に繰り返し語っていた。『国際貢献しないでどうするのか?日本は世界から孤立してもいいのか?』
いま、世界的に孤立しているのは、誰が見ても国連無視でイラクに先制攻撃をかけたアメリカとイギリスではないのか。小泉首相は、正反対のことをさも正しい事のように捻じ曲げてさりげなく語る、ある意味で天才かもしれない。小泉首相の自衛隊派遣の大義名分である「国際貢献」は、逆に世界の「ほとんどの国連加盟国」の意思に反している。大量破壊兵器も見つからないのに、今自衛隊を派遣すれば、世界から孤立するのは、どう考えても日本のほうである。小泉首相の詭弁は、論理的にはむちゃくちゃである。
「あなたはなぜ国連無視のアメリカの先制攻撃を支持したのですか?」という国会での質問に対して、「国連憲章にのっとって支持した」と小泉首相は、さも当たり前のように答弁している。小泉首相は、完全に国民を舐めきっているとしか思えない。マスコミに向かって国連のアナン事務総長は、何度もなんども、こう語っている。
「アメリカの先制攻撃は、国連憲章への挑戦である」と。
今イラクでは、米軍だけでなく、その同盟軍や国連関連施設等のソフトターゲットにまでテロのターゲット広がってきている。そしてついに日本大使館員2名が、その犠牲となって殺害された。 彼等テロリストたちは、シリア、サウジ、パキスタン等から越境して、どんどんイラク国内に入ってきているようだ。アメリカ軍は、国境の警備をなぜか手薄にして、彼等テロリストが入ってくるのを止めようとしていないように思われる。
なぜなら、「アメリカ新世紀プロジェクト(
PNAC)」のメンバーであるラムズフェルド国防長官、チェイニー副大統領、ウォルフォウィッツ国防副長官等ネオコン派は、イラクやアラブ諸国の安定を決して望んではいない。イラクが本当に安定してしまうと、イスラエルの占領地拡大の「国益」に反してしまうからだ。ネオコン派は、あくまでイスラエルの味方であるから、本音はシオニストが要求する終わりなき戦争を望んでいるようだ。それは「フセイン拘束」が発表された今も、基本的には変わらない。
だからもしここで、経済大国である日本の人道支援を目的とした「自衛隊」がテロリスト連中に殺害されるようなことが何度か起これば、アメリカのネオコン連中にとって、これほどグッドタイミングな事件はないことになる。テロリストの親玉である「アルカイダ」が、アメリカのイラク先制攻撃を支持した国として、すでに名指しで日本や自衛隊を「敵」とみなすと宣言している。だからいまテロリストたちが、憲法9条によって戦うことを禁じられているはずの日本の自衛隊殺害事件を起こしてもらえれば、ネオコンにとってこれほど嬉しいことはない。もしそうなれば、今までギクシャクしていた国連安保理でのアメリカの立場が、「アルカイダが日本の自衛隊殺害」の事件報道によって、一気に有利になってくる。
当然その結果としてアメリカは正義の御旗の元に、多国籍軍を指揮して、テロリスト連中が侵入してきたであろうシリア、イラン、サウジアラビアに批難を集中させるように主流メディアを操ることで、アメリカ軍がそれらの国に「侵攻」したり、「経済制裁」をおこなったり、「諜報活動」することに対して、世界的な「大義名分」のカードを手にすることが可能となる。これでラムズフェルド国防長官らネオコン派は、大手を振ってアラブ諸国に「侵略」することが可能となる。アラブ諸国が不安定になり終わりなき戦争になればなるほど、イスラエルは喜ぶのである。ようするに、ブッシュにとって、小泉首相様さまなのである。
テロリストとの「永久戦争」
しかし日本にとっては、その事件の勃発で、恐らく大変なことになってしまうにちがいない。小泉首相の首が飛ぶ可能性は高い。しかし以前から私が言っているように、このような状況の中で、あえて日本がイラクに自衛隊を派遣するということは、米英占領軍の明白な同盟軍になることであり、テロリスト連中を「敵」とみなす、と宣言することになってしまう。
国際法の視野からみれば、イラク国内に足を踏み入れた瞬間から、「自衛隊」にはその気がまるでなくとも、現地での「ゲリラ戦」に参戦したことになってしまう。日本としては、アメリカのご機嫌を取るために一時的に派兵したのだろうけど、テロリストの攻撃を受けて「自衛隊員」に大量の死傷者を出してしまったら、日本は途中で、イラクから「自衛隊」を引き上げることができるのだろうか。それともアメリカ軍のベトナムでの戦いのように、アメリカ軍と最後まで戦う覚悟ができているというのか。
それに復興部隊といっても攻撃されれば、当然自衛隊は反撃して「テロリスト」を「迎撃」せざるを得ないことになり、「平和国家」であったはずの日本が、ついにイラクの地で、戦いの血で汚れてしまうことになる。まさにその瞬間を、アメリカのネオコンの連中は、首を長くして待っているにちがいない。そしてテロリストが待ちに待った日本の自衛隊がイラクの地を踏むことで、≪自衛隊攻撃される≫のセンセーショナルなニュースが、どこかのタイミングで必ず訪れることになる。
いつの時代も、戦争を始めるのは、本当にたやすい。そしてパレスチナでのイスラエルのテロ戦争でもわかるように、テロとの戦争は、まちがいなく「永久戦争」になるにちがいない。小泉首相の「テロに屈しない」とおっしゃるワンフレーズに国民が騙されて米英の手先になってしまうことで、世界中に住んでいるイスラム教徒たちから「敵視」されるようになり、今後は、アメリカと同じように「テロの恐怖」のなかで、日本人も生きていく覚悟をしなければならない。「テロに屈しない」とは、そういうことなのだ。
あぁ、なんてこった。
『終』
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