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雪国より愛をこめて No.122003年12月19日

「無」の ささやきこそ現実

2003年も暮れようとしている。外を見ると、チラチラと雪が降っている。私は、富山県の人口4万にも満たない小さな市に住んでいる。北陸だから当然雪は降るし、目の前にある四季の変化を肌で感じられるし、海も山もすぐ傍にあって、自然にはまったく不自由しない。気温だって東京とほとんど同じだし、とにかく静かで空間が広々しているから、いつも安らいだ優しい気持ちでいられるのが、何よりも贅沢でいい。

しかし小泉構造改革によるデフレの強風は、地方ゆえに、やはり相当に強い。小泉改革で切り捨てられた地方の中小企業はどこも息絶え絶えであるし、失業率も高い。たとえ、このデフレが収束しても、地方のこの潮流は大きくは変わらない、と思う。この不況の苦しみの中から、その恵まれた自然の中にある無限の潜在力を体内に取り込んで、できればこの際に、弱肉強食の競争力学とは対極のパワーに目覚めることで、地方独自の自然の豊かさに満ちた、新たな跳躍を創造したいものである。

そんなわけで私は、あなた方読者を、これから未知の旅に案内したい、と思う。普段の価値が通用しない、見果てぬ地平を探りにいくつもりである。その場所とは、もちろん北陸や地球の果てなんかじゃなく、予想に反して、あなた方のすぐ傍、そう、手を少し伸ばせば、すぐにでも触れられるところにある。

その場所は、人間の五感が捕らえた3次元の世界、或いはすべてが相対的で物質優先の世界ではなく、時間を超越して、誰もが永遠に生きられる量子論の至福の世界なのだ。またその場所は、確固とした実体のない世界であり、始まりも終わりもなく、どこまで行っても限りなく、広大な虚空のなかで振動する量子のスープのような、膨大なエネルギーで統一された 絶対の場所 なのだ。

そこではすべてがつながっていて、誰もが一体なのだ。だから混沌と情報のスープのなかに、ある意図が加えられると、そのエネルギーのスープの場が局所化して、ついに実体化する。銀河系から地球上の草や木や動物の生命まで、すべては、そんな具合の宇宙の自己組織化力によって形成されているのだ。もちろん人間の生命や願望も、その例外ではない。

私たちの願望や夢を、その量子のスープに与えさえすれば、その宇宙の自己組織化機能が自動的に働いてくれる。そして自分が夢見たとおりの現実が、そっくりそのまま、再創造されてしまう。これらの法則は、いま、最新の量子論の仮説と、どうやらほとんど一致してきているようだ。 だが私たちは、そんな仮説ではなく、もっともっと古い仮説の中で育ってきてしまっている。もちろん、それが仮説だとは思わずに。たとえば、こんな風な言葉に、だ。

 

★ 現実という客観的な世界が厳然と存在し、人間の肉体も当然その世界に属している。

 

★ 肉体がまず先にあり、精神はそれに従属する。

 

★ 私たちの五感は、世界のありのままの真実の世界を正確に映し出している。

 

★ あらゆる生物はそれぞれに独立していて、切り離された完結した存在である。

 

★ 人間は運命からは絶対に逃れられないはかない存在である。

 

★ 時間や空間は絶対的な尺度であり、誰にとっても同じように存在し過ぎてゆく。

これは、アーユルヴェーダの著名な提唱者ディーパック・チョプラ氏が、その著書「エイジレス革命」の中で語っている箇条書き部分を、一部引用させてもらったものだ。つまり私たちは、そういった具合の仮説の中で生活してしまっているのだ、とディーパック・チョプラ氏は語る。そしてさらに『物質資本主義の価値観の中で、いずれ必ず機械が壊れるように、ある時期がくれば、それで一巻の終わりとなる価値観の中で、わたしたちは生きてきた』とも付け加えている。

確かに、これらの仮説は人間の本質に関して大切なことを見落としているし、私たちをとりまく環境を、正確に把握しているとはいえない古いパラダイムである。現代の新しいパラダイムは、かつての天動説のように、それらの仮説が、もはや古い固定観念に過ぎないことを証明しつつあるようだ。

現代の量子物理学が、私たちにもたらした新しいパラダイムでは、物理的な世界に、絶対的なものは何もない、と言っている。独立した客観的な世界が存在する、と考えること自体がすでに誤りなのだ。つまり現実とは、それを知覚する感覚器官の反映にすぎない。人間の神経系は、周囲で活動しているエネルギーの10億分の1程度しか認識できないようだ。私たちの周りには、私たちに解釈される前の、未処理の生データが存在する。私たちは、五感を通して、その形のない未処理の生データを、3次元の世界に現実として無意識に取り込んでいるらしい。

つまり現実とは、五感というフィルターを通して脚色されたヴァーチャルなデジタル空間なのだ。ありのままの生データとしての自然界には、もともと色も音も何もないのだ。もちろん匂いも、美も、手触りも、何にもないのだ。

なんとも衝撃的なくらい、すべてが不確かで、形のない世界なのだ。ということは、混沌とした生のエネルギーを、新しい意味深い現実へと変えていくことによって、創造的で自由な未来が開けてくることになる。

私たち人間の体は、原子が集まってできた物質によって構成されているようにみえる。しかし量子力学によると、その原子も、究極のところはまるで空っぽな空間ということになる。その中を、猛スピードでかけめぐる粒子は、じつは振動するエネルギーのかたまりである。その微妙な振動によって情報が伝えられ、それらの振動の仕方が、様々な暗号になっているようだ。ある鼓動が酸素原子、また別の鼓動が、水素原子を意味するといった具合になっている。そんなふうに暗号が抽象的であるように、私たちが住む世界も、突き詰めていくと、質量をもたないエネルギーであり、さらにそのエネルギーも空っぽの世界へと消滅していく。

このからっぽの量子の場には、情報が語られぬままに静かに包含されている。ビッグバン以前から、世界は目に見えない形で存在していたようだ。ようするに、人間の体をふくめ、この宇宙に存在するすべての物質は、本当のところは、非物質なのだ。そして、この非物質は、知のプログラムを有している。すべての原子のからっぽの空間には、目に見えない知の鼓動が躍動しているのだ。

つまり、生物の代謝は、単なる燃焼ではない。 DNAに存在する知がおこなう反応といえる。単なる無機物にすぎない糖が、生命を支える物質となるのは、代謝によって情報が吹きこまれるからなのだ。この知の流れが、私たちを生かしている。私たちが死ねば、この流れは途絶え、DNAに組み込まれた情報は意味を失う。

そしてすべての物質は、秩序だった状態から無秩序へと崩壊していく。人間の体が、ただの物質なら、時がたつにつれて衰弱していくことはまず避けられない。しかしエントロピーの法則は、知にはあてはまらない。私たちの目に見えない部分は、時が過ぎても崩壊しないのだ。様々な宗教の導師たちは、何百年も前から生命の本質は知の鼓動であると悟っていた。深い次元で生命は意識であり、意識は生命であるということを、知っていたのだ。

知は、それを入れている肉体よりはるかに豊かで、躍動感にみちている。それは感情の流れを創ることもあれば、分子の姿をとることもある。たとえば、不安や怒りのような感情は、抽象的で捕らえどころがないと同時に、目に見えるものであるアドレナリンの分子でもあるのだ。感情がなければ、ホルモンは分泌されず、ホルモンがなければ、感情もない。思考があるところには、必ず化学物質がある。

心と体を切り離して考えない新しいパラダイムの医療は、この単純な真実を基礎にしている。だから愛妻を亡くして生きる希望を失ってしまった男性は、ガンや高血圧症になりやすいし、自殺願望のある人は、普通の健康な人よりずっと病気になりやすい。そんなわけで痛みや症状は、人によって反応は異なるし、同じ人でも状況が変われば違う反応をする。つまり症状や痛みは、さまざまに変化する生のデータにすぎないのだ。意識の持ち方で、人生や老化のプロセスは確実に変化する。

ギリシャ神話のミダス王は、願いがかなって、触れるものがすべて黄金に変わるようになる。それゆえにミダス王は、物質の本当の生の手触りを、もはや知ることができない。雨や草木や、ふんわりとした牡丹雪や絹のような肌が…彼が触れた瞬間に、何もかもが冷たい金属に変わってしまうのだ。

それと同じように、わたしたちの固定観念が、生の量子の場を、三次元の日常の生活空間に変えてしまうため、量子の世界の真実の手ざわりを知ることができない。思考であれ、五感であれ、まっさらの量子の場を一瞬のうちに変質させてしまう。手垢のついた常識が、虚空のなかにある無限の選択肢からひとつの組み合わせを選び、それを時空間における日常的な出来事へと構成してゆく。私たちの細胞は、たえず経験を処理し、あなたの解釈にしたがって代謝をおこなっている。私たちは生のデータを捕らえ、それに判断を与えているだけではない。その解釈を、自分の体の一部にしている。

つまり、私たちの体は、生まれた瞬間から学習してきたもろもろの解釈の物理的な集積なのだ。このような統合的な意識を持つとき、外側にある人や物や出来事は、すべて自分の体の一部となる。私たちは、これらの対象物との関係を映しだすメディアにすぎないのだ。自分を、周囲の世界と切り離れた存在とみなす現代の物質文明は、私たちをして、他の人と奪い合い、周囲の環境を無残に破壊せてしまう。

そして、バラバラであることの究極の形である「死」が、いつも私たちをして恐怖の虜にする。生命はたえず変化してゆくが故に、その変化の予感そのものが、私たちを恐怖に突き落とす。そして恐怖は、最後には暴力を産みださずにはおかない。それが弱肉強食の資本主義の行き着く果てなのだ。人々や事物から切り離されたように私たちが感じるとき、目の前に見える人々や事件を、私たちは自分の思いどおりにコントロールしようとする。

もし周囲の世界と一体と感じるなら、周りにやさしく包まれていると感じる調和のとれた状態なら、私たちは、暴力とは永遠に無縁である。私たちの延長である宇宙と自然に調和しており、ほんのわずかの違和感もないからだ。アインシュタイン、ボーア、ハイゼンベルグといった量子力学の新しいパイオニアたちは、この世界の波動を、宇宙の精神にたとえている。そして、宇宙それ自体が、「生きた神」だと考えるようになってきている。

  「不耕起農法」と日本の再生

  今、日本本来の農法である「不耕起農法」が、日本国内の一部の農家で進められている。≪不耕起米(ふこうきまい)コシヒカリ富山産サイト http://www.yoshidaco.com/fukoukimai.html

まだシェアは1%にも満たない段階ですが、老若男女を問わず、この農法に挑戦しています。この「不耕起農法(ふこうきのうほう)」とは、一言でいえば、≪耕さない農法≫のことであり、農薬も使わず、自然にまかすという≪農業の基本≫そのものなのです。

人間が自然に手を加え、収穫を増やすための手段として農薬を使い化学肥料を使う今の農業への真正面からの挑戦といえます。もちろんその現場では、手間もかかり、雑草も生えるし、収穫も減るという良くないことばかりなのですが、それでもこの農法を手がけている農家の方々は、決して挫けてはいません。なぜなら、≪農薬を使わない本当のお米が採れる≫からです。「本当のお米」は、日本人にとってやはりかけがえのないものだと私は思う。

それに、この不耕起農法を導入している田んぼには、生き物が戻ってきているのが、何よりも嬉しい。タニシ、ザリガニ、カエル、おたまじゃくし、それから鳥たちの種類も増えてきている。そしてこれらの小動物が、田んぼに好循環の自然のサイクルを与えてくれているようだ。確かに今は、この「不耕起農法」は、まだ試行錯誤の段階ですが、中には県をあげて取り組むところも出てきています。

うまくいけば日本国中、この農薬のない安全な田んぼだけになり、昔ながらのめだかやタニシがいて、それを狙って鳥たちが舞い降り、夜には蛍があたり一面に舞うという、あのたとえようのない懐かしくも美しい光景が、ふたたび戻ってくることになるのです。ただ、この「不耕起農法」では、今のところ収穫が30%ほど低下するようであり、お米の値段はその分高くなります。

つまり、この「不耕起農法」を育てていくためには、私たち国民が≪環境税≫としていくらか負担する必要がでてきます。現在、この「不耕起米」は、10キロで4,500円ほどになり、通常のお米に比べご飯一膳あたり≪数円≫の負担増になります。私たちの子供たちが安全なお米を食べるコストとするなら、考えてみる価値は高いように思います。もちろん、これからも農家の方にいっそうの努力をしてもらい、その収穫を、農薬を使った場合と同じレベルまで引き上げることができるようになれば、より効率のよい「新農業」が可能となります。

「不耕起農法」では、草取りが最も大変とされていますが、たとえば「草取り体験」を、子供たちの課外教育の一環として学校のカリキュラムに定着させれば、子供たちの修学の上で、とてもプラスになるような気がする。そして子供たちが「草取りをしたお米」を「草取り代金」の代わりとして送ってもらい、そのお米を「課外授業の一環として子供たちで自炊」して食べれば、子供たちにとって間違いなく最高の体験になるにちがいない、と思う。

日本人が忘れてしまった自然との共生が、この「不耕起農法」で蘇れば、日本経済が破綻し国民所得平均が国際標準年俸300万円になろうとも、日本人の命だけは守られることになる。いまはまだ1%のシェアだが、これが10%になり、20%になり、しまいには、すべての田んぼに導入されれば、日本の農業は完全に蘇り、「和」の精神を尊ぶ日本人が、古来から大切にしてきた自然の力のよって、再び蘇るチャンスが訪れることになる。

 

                    《主な参考文献および記事》 

(本記事をまとめるにあたり、次のような文献および記事を参照しました。ここに、それらを列記して、著者に感謝と敬意を表すると共に、読者の皆様の理解の手助けになることを願います。)

 

★  エイジレス革命 ディーパック・チョプラ 沢田博 /伊藤和子共訳(講談社 1997)

 

 

 

『終』

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