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詐欺と略奪の弱肉強食ワールド No.62003年10月25日

ラスベガス風に進化した賭博経済

戦後の日本経済は、加工貿易を国家の柱にすることでずっと貿易黒字を維持し、とにかく世界第2位の資本主義国家になることができた。もちろん、そこには地理的な幸運が大きく作用した。米ソの長い冷戦構造が存在したために、極東アジアのデッドエンドにある地理的ポジションが、アメリカのアジア覇権に於ける戦略の要としての民主化モデル、つまり「反共の防波堤」として日本はとても利用価値が高かったわけなのだ。

アメリカは、戦略的な基地として微妙な位置にある日本を、ソ連に取り込まれて共産化させるわけには絶対にいかなかったし、中国や他のアジア諸国を自由主義陣営に取り込むためにも、何としても日本を自由主義を象徴するアジア先進国モデル国家にしたかったわけなのだ。もちろん敗戦後アジアの何処よりも日本がたやすく高度経済成長を達成できたのも、それが最大の根拠であり、それ以上でもそれ以下でもない。

この真実を日本人は未だに理解できない。確かに日本人は勤勉だし、起用であることも間違いのない事実だ。しかしそれと実際に世界経済の中でジャパン・アズ・ナンバー1に日本が成れたこととは、まったくと言っていいほど関連性がない。様々な利権と欲望が渦巻く世界覇権の力学は、はっきり言って、そんなに生易しくできてはいない。純粋な絵に描いたような力学で動く理想的な社会は、残念ながら現在のところ、この地球上の何処にもまだ実現されていない。

今も昔も、この世は支配するか、支配されるかで成り立っている。遥か昔にバイキングがおこなった略奪システムは、現代社会にそのまま脈々と受け継がれている。つまり支配する側が、その時代の流れに応じて、巧妙にやり方を変化させているだけなのだ。あくまでこの世はゼロサム社会であり、仕方なく口先だけで民主主義とか平等とかを唱えはするが、実際のところは、略奪こそが文明社会の基本となっている。美しく愛に満ちた社会は、未だにバーチャル空間にしか存在しない。

世の中には得をする人間と、損をする人間の二種類しかいない。これは神が与えた運命というよりは、人間が住む社会の仕組みから生まれる必然的な成り行きなのかもしれない。だとしたら、日本人はどうなのだろうか。

90年代に入って、日本はついに経済破綻した。株式を売買する東京証券所がある兜町は、散々な苦境に陥った。日本人は誰にだまされたのか。アメリカの金融マフィア?それともジョージ・ソロス率いるヘッジファンド?もちろん間違いではないが、投機屋であるジョージ・ソロスは雇われて忠実に動いているに過ぎない。彼は与えられた役割をこなしている駒のひとつに過ぎないのだ。

もちろんジョージ・ソロス等投機屋は基本的に金のない国では生きられない運命にある。イギリスが繁栄した時代には大英帝国の基礎を築いた産業革命の機械化と、ジョージ・スチィーブンソンの蒸気機関車の発明による鉄道の発達があり、アメリカが繁栄した時代には、ロバート・フルトンによって蒸気船が発明された後、鉄道、石油、鉄鋼、電気、通信、自動車、テレビ、ハリウッド映画、コンピューター、航空機、宇宙開発、インターネット等を育て上げ、いずれも大財閥と億万長者を創造した。そして日本が繁栄した時代には、そのすべての分野でアメリカを追いかけ、小型かと改良という利便性と経済性と追求してみごとに世界を席巻した。

90年代にビル・ゲイツが登場して新しい産業が再び怒涛のごとくやってきて、倒れかかっていたアメリカの金融界を、再び日本から取り戻すことに成功した。次から次と新しいものを世界に提供してきた独創性という意味で、アメリカは、19世紀以来一貫してトップの座を守り続けてきた優れた国である。その経済が転落しそうになると、必ず軍事戦略が政治の前面に出てきて、世界をアメリカの軍事力で強引にねじ伏せ混乱させて、管理してゆこうとするのが、アメリカの特徴である。

そのビル・ゲイツ達、現代の産業家が存在してこそ、初めてジョージ・ソロス等投機屋がウォール街活躍できるのである。あくまで彼らは莫大な金を移動させることを生業とした、何処まで行っても付加価値を産みださないゼロサムビジネスである。98年には、すでに全米で700万を超える口座が開かれ、ネット取引によって株の売買が行われるようになった。全世界のデリバティブ市場は150兆ドルに達し、デイ・トレーダーと呼ばれるにわか投機屋がゲイツのプログラムを駆使して相場を乱高下させてマーケットをゲーム化する。そのヘッジファンドの運用額は、ピーク時に8兆ドル、つまり880兆円という規模までふくらんだが、 LTCMが破綻したあと、98年11月にはその半分の4兆ドルに落ち込むほどの危うい世界である。

この被害者は、本当はいったい誰なのだろうか。ジョージ・ソロスの被害は大げさにマスコミで報道されるが、彼らが損をするはずはない。投資銀行ゴールドマン・サックス会長時代に年俸30億円をもらっていたロバート・ルービンは、大統領選でクリントンの選挙参謀として資金集めに奔走した後、経済担当の大統領補佐官に就任すると、たちどころに円高政策を実行に移して日本経済をどん底に突き落とした。

91年、イギリスの新聞王ロバート・マクスウエルが船から落ちて怪死する事件が発生すると同時に、莫大な債務と資金使い込みが明らかになったが、その金融犯罪に関与していたのが、ゴールドマン・サックスであった。その5年前の86年、ゴールドマン・サックスは住友銀行に同社株3900万株を保有するよう投資を迫って1000億円近い資金を注入させ、しかし経営には一切口を出させなかった。さらに同社は富士銀行、あさひ銀行と提携し、東邦生命本社ビルを300億で買収した。破綻した日本長期信用銀行の取締役会が譲渡先選定のアドバイスをゴールドマン・サックスに依頼した結果、前 FRB議長のポール・ヴォルカーを顧問に抱えたアメリカの清算屋リップルウッド・ホールディングス・グループが長銀を落札した。

そしてウォール街の絶頂期に入ったゴールドマン・サックスは共同出資経営を99年5月に廃止し、全株の13%を公開して、ニューヨーク証券取引所に上場した。公開翌日には株価はなぜか狂ったように3割も上昇し、一瞬で約4200億円調達した。こうした新規公開株の大騒ぎの背景では、公開前に間違いなくボイラー室犯罪がアメリカ財界の大物個人のあいだで取引され、国際金融マフィアの胴元がはるかに大きな利益を得ているのである。

2003年1月には、三井住友ファイナンシャルグループが不良債権処理のため1503億円の優先株を発行し、ゴールドマン・サックスが全額引き受けることで合意したと発表した。その一ヶ月前に、三和銀行、東海銀行、東洋信託銀行の合併によって誕生した UFJ グループが、メリル・リンチから1000億円の優先株出資を受けて新会社を設立し、不良債権1兆円分を分離するというニュースが流れたばかりだった。さらに三井住友ファイナンシャルグループは来月にも主幹事にゴールドマン・サックスを選んで、海外投資家から3450億円追加増資を発表した。日本人の預金を管理する大銀行が、不良債権をなくするためにアメリカに次々と負債をつくりだす。

為替レートの人為的な操作によって、あらゆる国で労働賃金が国際的な尺度に無理やり当てはめられ、地方にある優れた中小企業が立ち行かなくなり、ついには工場閉鎖を余儀なくされ、日本国内の空洞化が加速する。いつまでも止まらない企業倒産の結果として、失業者と自殺者が過去最大に増え続けている。この不良債権の貸し倒れ現象にとっては、国際金融マフィアによって一日に1兆ドルもの為替取引がなされるという、その制度そのものがすでに金融犯罪なのだ。

マレーシアのマハティール首相の発言によって、世界で初めてその犯罪性がメディアを通して指摘された。そしてこのような金融社会が、いま軍事シンクタンクと共同で、いよいよ世界を戦争経済に導きはじめている。

 ソロスを操る国際金融ファミリー

ヴァンダービルト、グッケンハイム、メロン、ロックフェラー、ベアリング、モルガン、ロスチャイルド等の、それぞれの家族資産だけで巨大ヘッジファンドに相当する国際財閥が張り巡らす権力構造の中で、ソロスたちは、彼らファミリーに相続された遺産の運用を委託され、高い利回りを報告しなければならない。つまり、ソロスは現場のゲームプレーヤーに過ぎないのだ。

数百年にわたって金融メカニズムを抑えてきた国際金融ファミリーたちが、最も基本的なプランを図解して、ディーリング・ルームで活動しているプレーヤースタッフに指示を出す。彼ら本物の財閥ファミリーは、その天文学的な財産が社会から痛烈な批判を浴びることから逃れるために、常に時代的な看板として、メディアのスポットライトを浴びてくれる存在が必要となる。

その一人がジョージ・ソロスなのだ。それではソロスの生い立ちと行動の軌跡を、広瀬隆の著書「アメリカの経済支配者たち」(集英社新書)から引用させてもらう。

  (転載引用開始)

•  ハンガリーのユダヤ人として生まれ、1950年代にアメリカに渡り、69年にブライヒレーダー商会に入って、国際ファンド・ビジネスをスタート。拠点をロンドン、チューリッヒ(スイス)、キュラソー(カリブ海にあるタックスヘッブンの島)において突如“世界最大のマネー・マネージャー”の異名をとる。87年、ロスチャイルド一族のマイケル・デヴィッドについで、ウォール街の収入番付で第2位となる。
•  彼の右腕となって活躍したのは若手の大集団で、ミューチャル・ファンドの開拓者ドレファス・コープほか、ウォール街で有名なベア・スターンズ、コールバーグ・クラヴィス・ロバーツ、タイガー・マネージメントといった錚錚たるのっとりブローカーのオフィスから引き抜かれて、ソロス財団に入ってきた。このトレードには資金を一ヶ所に集中させ、ウォール街全体の意思統一があったと見られる。 •  93年1月、窮地にあるロシアのエリツィン大統領に一億ドル(約110億円)を個人寄付して金融界を驚愕させ、一年で動かした額が一兆円をはるかに超える。国連の加盟国のうち40カ国以上は、ソロス“個人の収入”より“国内総生産”の金額が小さかった。この頃から、全世界の証券取引所で、「ソロス」という名前が投機情報の一部となる。ソロスが資金を運用するクォンタム・ファンドは、93年9月1日までの5年間を通じて世界一にランクされ、利益率は772%に達した。

•  94年3月、ユーゴスラビアから独立したマケドニアに400万ドルを個人的に緊急援助し、この年、元CIA副長官フランク・カールッチ率いるシンクタンクのカーライル・グループがソロスを迎える。ジェームズ・ベーカー等と密議をこらし、春からソロス・グループが日米経済協議のアメリカ代表団の顧問格として政治舞台に姿を現す。同時に、日本に乗り込んできたソロスの参謀たちが、日本人プレーヤーを物色して子飼いのブローカーとして雇いはじめる。

この時期、ユーゴ内戦の戦犯を裁く国際法廷にソロスが資金を出し、ヘンリー・キッシンジャーの右腕ローレンス・イーグルバーガーによる国連難民高等弁務官事務所との連係プレーがスタート。同事務所へのソロス・ファンドからの拠出額は260万ドルに達し、ここを拠点にユーゴ内戦への武器輸出が活性化。

•  94年10月、アルゼンチンの大草原にある巨大な農場を買収。この頃、全世界の金融界に、「ロシアには1セントも投資もするな」という経済分析を示しながら、ソロス自身はロシアの石油、天然ガス、ダイヤ、などの天然資源を最終目的として、周辺人脈に1億ドルをはるかに超える莫大な支援を続ける。この支援サークルに国務副長官ストローブ・タルボットが参加し、ソロスを絶賛。タルボットとオックスフォード大学時代に同室だったのが、クリントン大統領である。タルボットはロシア経済マフィア集団のフィクサーとなり、99年のユーゴへのNATO軍攻撃後に大統領特使となる。 •  97年、タイの通貨バーツの暴落、マレーシア市場の破壊などに動き、99年2月、ソロスのパートナーだったアルミニオ・フラガが経済崩壊中のブラジル中央銀行総裁に就任するなど、アジア〜中南米での活動が全世界の批判の的となる。

•  98年の“フォーブス”億万長者リストでは資産40億ドル(4400億円)で29位にランク。乗っ取り屋カーク・カーコリアンの50億ドルに比べれば小額で、この額は疑わしい。そしてウォール街最大の事件、ヘッジファンドLTCMの破綻。

 (転載引用終了)

絶対に損失が出ないはずだったLTCN(ロング・ターム・キャピタル・マネージメント)がロシアの金崩壊の影響を受けて40億ドルの損害を受けて破綻し、一時ウォール街が大暴落した。ところがすぐにウォール街とホワイトハウスをあげて、なぜかLTCMは直ちに救済さてた。

そのLTCMの経営者ジョン・メリウェザーは、91年にアメリカの国債を一手に引き受けていたソロモン・ブラザースの副会長で、ソロモン時代はジェームス・ウォルフェンソーン(後の世界銀行総裁)のパートナーであった。

ウォルフェンソーンは、シュローダー銀行幹部、ソロモン・ブラザース・スミス・バーニー会長を歴任した後、ウォール街の買収ブローカー「ウォルフェンソーン・インコーポレイテッド」を経営し、93年にソロスをパートナーとして1兆円以上の企業買収を成功させ、95年から世界銀行総裁に就任した。同僚のスミス・バーニー副会長だったのが、J・P・モルガン財閥の当主ジョン・アダムス・モルガンであり、その一族であるJ・P・モルガン会長プレンストンの後任総裁として、ウォルフェンソーンが選ばれたのである。

ところがメリウェザーは、ソロモンでの国債の不正入札が発覚して辞任に追い込まれ、LTCMを設立した。その経営に参加したのが、勝手の株価暴落に関する大統領調査特別委員会の事務局次長だったデヴィッド・マリンズであった。不思議なことにマリンズは連邦準備制度理事会(FRB)副議長だった人物で、当時FRB議長ポール・ヴォルカーの部下だったから、後年の両者のLTCM経営参加の関係から、マリンズから国策情報がメリウェザーに筒抜けとなって、二人が組んで不正入札がおこなわれたと考えるのが自然である。

そのソロモンが扱っていたアメリカ国債を、日本の金融機関は強引に買わされたが、95年までは一時は1ドル80円という円高に誘導した。そして世界銀行幹部から99年7月にクリントン政権の財務長官にのぼりつめたローレンス・サマーズが、日本に圧力を激しくかけ続けた。為替レートを操作するソロスと、そのレートに従って利益が変動する国債を販売したマリンズと、国債を引き受けたメリウェザーと、その国益を受けるサマーズとヴォルカーと、LTCMを運営したマートン等が、皆ウォール街の同胞である。

絶対に失敗しないはずの資産運用法をヘッジファンドと勝手に名づけて、その理論をマートンたちが構築して見せたが、何故かソロスがこの手法の限界を見抜いて見せて、不思議なことに、全世界よりも速く破綻の警告を発していたのだ。

LTCMが破綻する前に、たびたびソロスが口にしていた「資本主義の限界」という言葉こそ、ソロスが自ら演出した凶暴な金儲けのシステムを非難されないための予防線だったのだ。この最大の被害を受けたのは、ウォール街を上げてLTCM救済資金をひねり出した場所、要するに金融マフィアが集金に行った日本と、アジア諸国と中南米なのだ。

外国人投資家の正体と350兆円のゆくえ

 1991年から輪郭が見え始めた日本の経済崩壊は、兜町を土台から大きく揺るがした。92年の4月からの暴落に続いて、7月にかけて東証第一部の平均株価が1万5000円台に突入し、ついに8月10日には一万4000台を記録した。いつまでも続く最安値の更新が、日本の国全体を震え上がらせた。そして外国人勢力による上場企業の買収・合弁へと、事態が急速に展開し始めた。

もはや投資家の損害どころか、日本経済が土台から崩壊しようとしていた。日本株式会社の中枢部が、が一句人投資家によって買い占められるところまで株価が急落し、安い株券が誰か特定の金融ファミリーに集中していたのである。果たしてこれらの暴落が、マーケットの自然な経済原理によってたまたま起こったものだったのか。

日本がこれまで利益を守ってこられたのは、国際金融マフィアが悔しがる『系列会社』の株の持合によるものだった。三井グループ、三菱グループ、住友グループ等はもちろんのこと、富士銀行〜安田財閥は丸紅と連携し、三和銀行〜日本生命〜東洋信託の三水会は日商岩井と連盟を組み、第一勧業は伊藤忠と、それぞれがチームで利権を守るように動いてきた。ところがこの相互持合い方式は、国際金融マフィアが、内部からトロイの木馬方式で侵入してくると、逆に一挙に乗っ取られ大変危ない構造であることがわかり始めた。つまり芋づる式にあっという間に買収されてしまうからである。

今までは株式会社日本独特の『株の系列持ち合い制度』があるため、外国人ブローカーはまるで歯が立たなかった。ところが金融マフィアが巧みに仕組んだ『バブル』という名の時限爆弾によって、兜町の上場株の内の四分の一近くを握っていた銀行業界が、不良債権の焦げつきで、これまで宝物だった手持ち株を大放出せざるを得ない羽目に陥ってしまったのだ。仕組まれた『バブル』の崩壊によって、株価・地価の暴落→銀行の不良債権の急増→融資不能→経済危機→更なる株価・地価の暴落という悪循環に陥った日本経済は、坂道を転げ落ちるように谷底へと転落していった。

その上さらに駄目押しをするかのごとく、国際金融マフィアによる残虐な圧力が日本の大手金融機関に加えられた。88年6月、スイスのバーゼルで開かれた“バーゼル・クラブ”こと国際決済銀行(BIS)の銀行規制会議において、今では知らない者がいない「銀行は、自分が持っている資本金の8%以上を貸し出してはいけない」と定められたのである。これは日本経済にとって、結果的に第2の時限爆弾となった。それほど国際金融マフィアにとって、70年代〜80年代に海外に大々的に進出し始めた日本の金融資本の力が、目の上のたんこぶだったわけなのだ。

この規制のよって、『バーセル・クラブ』の謀略通り、日本の銀行の手足を縛ることが可能となった。むやみに国民から預金を取れなくなった日本の銀行は、増資のよって自己資本を大きくし、この壁を何とか打ち破ろうとした。そして自己資本が運用されている不動産やノンバンク等の資金回収に必死になって走り回った。折から、地価の暴落が始まり、起こるべくして起こった不良債権に青ざめた銀行が貸し出しを渋るようになると、その融資に頼っていた経済界がガタガタになり、それに連鎖して兜町の株がみごとに下降線を描き始めた。

そして最後に、これを見越していたかのように、劇的な92年4月の『外国人投資家による銀行株の大放出』という第3の時限爆弾が、ついに仕掛けられたのだ。ソロモン・ブラザースやモルガン・スタンレーなどが一斉に投売りを始めて、まるで絨毯爆撃のような攻撃を日本の銀行に向かって開始したのだ。彼ら国際金融マフィアは、かなり以前からアメリカ・ヨーロッパ等の経済紙に、『日本のバブル』という言葉をすでに頻繁に紙面に載せていて、いつの日か近いうちに、このシャボン玉に針を刺されて経済崩壊が瞬く間に起こることを、すでに予告していたのだ。

では、このバブル崩壊で、兜町に出入りしていた外国人投資家は、いくら儲けたのか。92年の経済白書によると、株の暴落だけでほぼ350兆円が吹き飛んでいる。金融取引の世界はあくまでゼロサムの世界だから、その莫大な消えた金額とまったく同額のお金を、闇に隠れて誰かがまんまと手に入れたことになる。世界的な株価の変化に目をやってみると、不思議なことが起きている。

年初から8月までの株価の暴落率は、日本だけがダントツで、32・8%という急激な下げ幅を記録している。ロンドン、ニューヨーク、フランクフルト、パリ等はほとんど変化なしで、全体としてはわずかに上昇である。香港では、天安門事件後の反動で中国経済特区が急成長したために、逆に35・8%の急騰である。その中心にある香港上海銀行は、ロスチャイルド・ファミリーの創業した銀行である。

この時期世界の銀行界では、日本が断崖絶壁に立たされていたにもかかわらず、アメリカの巨大銀行が、チェース・マンハッタン、J・P・モルガンを筆頭に、その第二・四半期で恐ろしいほどの利益急上昇を達成したことを、UPI電が7月に伝えた。日本の証券会社が、全国210社合計で3600億円の経常赤字を記録したというのに、日本で活動している外国証券50社合計で、なんと前期の5・6倍という馬鹿げた収益を記録していた。

ちなみに外資系の1位がソロモン、2位がゴールドマン・サックス、3位がモルガン・スタンレー、4位がソシエテ・ジェネラルとなっている。ソロモンとゴールドマンは、すでに大和を抜いて、野村に次ぐ兜町の2位と3位に入っている。メリル・リンチのの純利益は53%増加と、前年と比べると過去最高を打ち立て、6月に入ってモルガンもまた東証株式の「売買高」の部門で兜町の3位に入り、四大証券のうち大和、日興を抜いてしまったのだ。

ここで彼ら外資系証券の開発した巧妙な手口のひとつ、裁定取引と呼ばれるまことに不思議な手口を挙げてみよう。裁定取引( arbitrage)とは、辞書で調べると『ピンハネ』と書いてある。売り買いをする商品には、目の前で取引する『現物』と、何ヶ月か先の取引を扱う『先物』がある。もし何ヶ月か先の株価を知っていれば、現物を先物とのあいだに出る差額(サヤ)をあらかじめ計算して、買いだめでも、売り逃げでも、コンピューターの操作だけで好きなように利益をあげられる。

今回最大の利益をあげたソロモンなどは、ずっと先の株価を知っているものと見え、このシステムでぼろ儲けしたのだ。日本の証券会社は、裁定取引に熱中すると証券取引所が混乱して自滅するという理由から、手控えてきた。しかし外資系にとって兜町の運命なんかどうでもいいのである。ウォール街の大スキャンダルとなったアメリカ国際不正入札事件の犯人、それが兜町を揺るがした同じソロモン・ブラザースである。 今まであえてはっきり書かなかったけれど、彼らは、何ヶ月先の株価を知っているわけはなく、未来の株価を、自作自演のインチキで上下させてきたのだ。つまり集団でつるんで物音ひとつ立てずに、一気に売る。理由は後で何とでもつけられる。チャートや実勢価格なんかまるで無視して、人工的に平然と株価を操作してきたのだ。はっきり言えばインサイダー取引であり、詐欺である。

このとき、チームで株価を完璧にコントロールできるだけの『巨大な資金』と『秘められた実行力』が戦略のキーワードとなる。そのチームを、日本の証券業界では「外国人投資家」と簡単に呼んで、なぜか曖昧なままの存在にしてきた。彼ら数百年の伝統を持つ金融業のプロに対して、あまりに幼稚な認識と言えないか。

日本人が初めて世界の金持ちの仲間入りをしたと言われながら、その実、投機のテクニックとして使われたのは、財テクと呼ばれる一般的な株券・政権の購入に過ぎなかった。要するに、知的な金融能力とはまったく無縁のものだったのだ。

そして今も、日本には本当の金融のプロは存在していない。

 

 

『終』

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