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核ミサイル迎撃決断に7分かかると発表した米国の意図とは? No.652005年5月13日

■ ブッシュと金正日の核ブラフゲーム

 

アメリカのカートライト司令官が11日、米上院公聴会で、北朝鮮から米国に弾道ミサイルが発射された場合、撃墜するかどうかの決断を約7分以内にする必要があることを明らかにした。アメリカ本土より北朝鮮との距離が近いハワイやアラスカに到達するケースを想定した場合、脅威の性質を見極めるのに3〜4分、撃墜するかどうかの判断を次の3〜5分でする必要があるとして、双方を合わせて「重大な決断をするのは7分前後になる」と述べている。

米議会では、先月29日に行なわれた米上院公聴会で、米国防情報庁(DIA)長官ジャコビー海軍中将が、米本土に到達可能な弾道ミサイルの弾頭に核兵器を搭載する能力がある、との見方を明らかにしたことを受けて、核攻撃を想定した議論が高まった流れである。( 参考記事

また米NBCテレビは6日、北朝鮮が準備していると伝えられる核実験を阻止するため、核施設への「先制空爆」を行なう作戦計画をすでに立案していることを報じた。グアムとインド洋に駐留するB2ステルス爆撃機とF15戦闘機を「警戒態勢」に置き、「核施設除去」の緊急作戦が発動されれば、いつでも北朝鮮を空爆できる状態にしてある、という。( 参考記事

またワシントン・ポストの6日付けの記事によると、東アジア部門の責任者であった元CIAの高官で、現在コンダルティング会社、コントロールリスクグループの上級副社長アーサー・ブラウン氏は、北朝鮮が核実験を強行した場合の最悪のシナリオとして、「放射性物質が外部に放出され、東京やソウルの市場は大混乱に陥る」と説明していた、と伝えている。北の核実験施設は、「死の灰」である放射性物質の放出を防ぐ十分な措置が取られていないため、同物質が漏出して風に乗り日本まで到達する可能性があるらしく、その結果として、東京やソウルの株式市場等は大暴落を起こし、とくにソウルに進出している外国企業は、撤退か規模縮小を余儀なくされるだろうと述べている。 (参考記事

この急激に緊張感が高まった流れの発端と思われるのは、最初にブッシュ大統領のほうが、金正日を「危険人物」と4月末に言い放ったときからである。それを受けて、北朝鮮の外務省スポークスマンは「ブッシュは人間のクズである」と負けずとやり返し、日本海に向けてミサイル「シルクワーム」を発射してみせた。そしてさらに北の外務省スポークスマンは「米国が北の核問題を国連安保理に持ち込むようなことになれば、我われは、その制裁を『宣戦布告』とみなすだろう」と述べているのだ。そんな流れの中で、ライス米国務長官は11日、CNNテレビのトーク番組に出演して、北朝鮮は「恐ろしい体制だ」と新たに指摘している。( 参考記事

 

■ 6月に核施設への先制空爆?

 

これらの記事をまともに判断するなら、まちがいなく北の核実験を阻止するため、6月には核施設へのアメリカの「先制空爆」が起こることになる。もし北の核施設にアメリカが「先制空爆」したなら、金正日は苦しまぎれに、日本や韓国に向けて弾道ミサイルを発射する可能性が生れる。町村外相は5月2日にワシントンでライス国務長官と会っているが、たぶん、このことに関して何らかの危機回避会談が行なわれたと思われる。実際のところ、日本には平和ボケしている余裕なんてないのだ。

金正日は2月の「核兵器保有宣言」にはじまって、最近になって原子炉の運転を停止しプルトニウム製造を再開する等の「瀬戸際外交」を繰り広げてきているし、ブッシュ政権もここに来て、過剰に北の核情報をリークしたり、煽ったりしはじめている流れである。

まあ、金正日のブラフはいつものことなのだが、ブッシュ政権側にも、かなりのブラフというか加工されたプロパガンダが入っているように、私には思われる。万が一のことが起った場合を前提にして、すでに日本やアメリカ国民を味方につけておこうとする雰囲気づくり戦略である。フセインのイラクを先制攻撃するときに使われた、まだ記憶に新しいあの「様々な情報操作」である。今回の様々な情報リークにも、心理的なプロパガンダが挿入されているように感じる。例えばカートライト司令官が、核ミサイルを迎撃するにつけて、「重大な決断をするのは7分前後になる」と述べていることが、日本にとってはとても「切ないこと」なのである。

なぜなら、北朝鮮のノドンやテポドン等の中距離弾道ミサイルは、日本の場合、発射から着弾までを含めて約7分しかないのである。7分間も、どうしようかと検討していたら、日本は核の直撃をすでに受けてしまっているのだ。極東半島の金正日が、何をおいても核ミサイルを手に入れようとする理由が、ここにあるのである。

 

■ 核ミサイル保有国になることで “無敵のならず者国家宣言”?

 

「核ミサイル」さえ手に入れてしまえば、すくなくとも金正日は、「日本」や「韓国」よりも、極東では政治的に大国になることが可能となる。地球上でとくに繁栄している極東アジアで、大国になるということは、恫喝さえすれば、たいがいの物は好きなように手に入れられるということである。そういう意味で金正日は、どこかの国の「能天気で平和ボケした政治家たち」よりはるかに利口なのである。

金正日に核実験をさせてしまったなら、その事実だけで、結果的に「核兵器保有国」として扱われるようになる。現在の核兵器保有国は、アメリカ、ロシア、中国、英国、フランス、インド、イスラエル、パキスタン等の8カ国なのだが、そこに金正日の北朝鮮が強引に割り込んできたことになる。この状況で北朝鮮が「核兵器保有国」になってしまったら、極東の軍事バランスが崩壊し、アメリカは極東アジアにおいて覇権を完全に失うことになる。

その結果として台湾や日本や韓国は、もちろん核兵器大国である中国の保護国となるわけである。なぜなら、北朝鮮はある意味で中国の隠されたカードであり、カードとして価値がある限り、金正日政権を保護し存続させ続けるはずなのである。しかしそんなことをアメリカは許すだろうか。それに私たちの日本が、中国の属国になってしまってもかまわないのか。

紀元前202年にローマに大敗して、事実上軍隊を持つことを禁じられた「経済大国カルタゴ」はその後ローマに嫉妬されるぐらいの繁栄を極める一方、名将ハンニバルが追放され、わずかの傭兵だけの情勢になる。そこに第3次ポエニ戦争が勃発して、カルタゴは無残に破壊しつくされ、この地球から永遠に姿を消してしまう。そして金銭よりも「武」を重んじた巨大なローマ帝国を築く流れとなるのである。いまアジアで軍事大国化しつつある中国は、このカルタゴ百年戦争を研究して、そのやり方を、この日本に当てはめているフシがあるという。

 

■ 日本民族の国防意識の目ざめ

 

それはともかく世界は、金正日がいつ核実験を行なうか、に注目していることだけは確かである。早ければ6月にも実施される可能性がある。金正日のいつもの「瀬戸際外交カード」としてのブラフなのか、それともアメリカが金正日のブラフをすべてわかっていながらも、核実験危機を煽ることで、韓国や日本や台湾にBMD(弾道ミサイルシステム)を配備、或いはアメリカ製核ミサイル(当然米本土までは届かない核ミサイル)を持たせることで、アメリカの覇権を維持し、ロシアや中国を封じ込めようと戦略的に考えているのかもしれない。

また北の核実験の可能性を煽ることで、中国の北朝鮮への侵攻のタイミングを促している可能性も考えられる。もしかしたら北への「先制空爆」と侵攻の役割分担が、中国と裏で暗黙の内に行なわれている可能性もある。

とにかく今回の金正日とブッシュ大統領のブラフ合戦は、日本民族にとってプラスになると思われる。この極東危機によって、日本民族の国土防衛意識が、戦後60年の歳月を経て、ようやく目ざめることが可能となるからである。

 

 

《主な参考文献および記事》

(本記事をまとめるにあたり、次のような文献および記事を参照しました。ここに、それらを列記して、著者に感謝と敬意を表すると共に、読者の皆様の理解の手助けになることを願います。)

★  日本のミサイル防衛システム(BMD)

『終』

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