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「正義」はカバー・ストーリーに過ぎない No.602005年3月16日

■マラッカ海峡でタグボート襲撃される

マレーシアのペナン島沖のマラッカ海峡で14夕方、日本のタグボートが海賊に襲われ、日本人の船長と機関長、フイリピン乗務員の3人が拉致された。国際海事局(IMB)海賊情報センターによると、タグボートは「襲撃されている」との救難無線を送ってきたようである。襲撃はペナン島南西39カイリのところで発生し、海洋警察がタグボートとはしけをエスコートしてペナン島に向かっているらしいが、別の船で、海賊たちは3人を連れて逃亡したということである。

このマラッカ海峡は、原油タンカー等の大型船舶が年間約5万隻も往来し、世界貿易量の4分の一、原油輸送量の半分が通過するという、日本及びアジアの大動脈の役割を担っている地政学的な場所なのである。マラッカ海峡では昨年確認された海賊事件数は37件あり、36人が拉致され、4人が死亡しているのだが、なぜか日本国内ではほとんど報道されていないように思える。( 参考記事 A、 参考記事B

かつて日本は、民主党のルーズベルト大統領のせいで、このマラッカ海峡を封鎖され石油ルートを失ってしまったために、どうにも経済が立ち行かなくなって、大東亜戦争を戦わざるを得なくなってしまった流れがある。

どうも日本を巡る周辺国の情勢が再びきな臭くなって来ている。具体的に例を挙げるなら、たとえば、14日に中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で「反国家分裂法」が全会一致で採択されたことや、当然降って涌いたように「人権擁護法案」が10日、古賀誠元幹事長によって再び要請する流れが起きたり、外国企業が日本の子会社を通じて株式交換で日本企業を合併・買収することができる「三角合併」等の法案提出の流れが起きていることである。

これらの3つの事件、「マラッカ海峡でタグボート襲撃」と「反国家分裂法」と「三角合併」等は、2005年以降の「新たな潮流」をはっきりと暗示している。つまり極東にある日本国の危機の暗示であり、日本民族に対する警告なのある。その予感のせいで、私こと千葉邦雄の発言は、少しずつ少しずつ民族保守的傾向が強くなってきているように思う。本当のところは、少し自分でも意外なんだよなぁ(笑)。

■日本への攻撃は、米国への攻撃とみなす

理想論だけでは、もはや日本民族が真面目に働いて築き上げてきた「大切な財産」や、極東の小さな島国故に、先祖代々四季に彩られた自然を神々と崇める「神道的豊かさ」を守りきれないと、強烈な「危機感」を私が抱いているからだと思う。マラッカ海峡の危機は、もちろんだけれども、「反国家分裂法」が採択されたことも同じ流れである。ライス米国務長官は13日、反国家分裂法について、「明らかに台湾海峡の緊張を高め、中台関係に好ましくない」と懸念を表明している。

もはや韓国が、北朝鮮や中国に取り込まれたも同然な流れになってしまっている以上、もし台湾まで中国に吸収されてしまったら、日本は極東で完全に孤立してしまうことになる。「ひとつの中国」をアメリカが認めてしまうということは、極東でのアメリカの覇権をすべて失うことを意味する。極東で覇権を失うということは、アジアに於ける貿易の覇権を失うことであり、当然世界貿易の決済通貨であるドル基軸体制を失うことである。

最近まで中国のドルの外貨準備は約60兆円もあったのだが、次第にユーロに外貨準備をシフトしている流れである。このまま大人しく中国の言い分を聞き入れたならば、間違いなくアメリカのドル帝国主義は破綻し、その結果として中国やインドの市場もアメリカは失うことになる。地政学的に判断するなら、イラクやアフガンに先制攻撃をかけた本当の理由は、アメリカのドル基軸体勢を守るため以外の何物でもないのである。

今後も双子の赤字を続けていくつもりなら、アメリカのドル帝国主義は、台湾の独立を阻止する「反国家分裂法」の採択を認めてしまうわけには絶対にいかない。アフガンやイラクや北朝鮮と違って、「中国」は核ミサイルを相当数持っている。だからアメリカは怖くてうっかり手が出せない。ようするに、ソ連との冷戦時代のような流れに再びなっている。

2003年2月26日に、アーミテージ国務省副長官は「日本への攻撃は、米国への攻撃とみなす。尖閣諸島も日米安保の適用対象であり、尖閣に外国からの軍事攻撃があれば、米国は自国への攻撃とみなして、日本を支援して反撃する」と声明している。この声明を聞いた当初は、正直なところ半信半疑だったのだが、最近は信じる気持ちに傾いてきている。また共和党系シンクタンク、ヘリテージ財団は「尖閣諸島防衛のために、東シナ海の海上哨戒行動に米軍を参加させて、日本を支援せよ」とも主張している。

もちろん民主党クリントン政権時のモンデール駐日大使は「尖閣諸島は日米安保対象外」と述べている。このことからも、親米や反米というものの見方が、まったく意味をなさないことがよく分かる。私自身も当時、すっかり困惑させられていたのである。正解は、アメリカは完全にふたつに分裂しているということなのだ。日本の自民党や民主党のように、わけが分からないごちゃ混ぜの政党とはまったく違う流れなのである。

とにかく日本は、アメリカと台湾とオーストラリア等と安全保障体制をしっかりと組んで、中国に恫喝されても決してビビる必要のない軍事体制を構築して封じ込めてさえいれば、中国は自らバブル崩壊し、ソ連のように幾つかの国家に分裂していくと同時に、いずれ民主国家に変身していくにちがいないのだ。だからこそ日本は、「中国」に対してはっきりと距離を於ける「強い国」にならなければならない。

■古賀誠元幹事長と「人権擁護法案」の不思議な関係

また突然降って涌いた問題の「人権擁護法案」には、今後全国で2万人の人権擁護委員が任命されることになっているが、一般市民が排除され、きわめて偏った人選がなされる意図が隠されている。同法案には国籍条項の定めがないために、朝鮮総連の各地役員やそれに共鳴する「成りすまし外国人」が人権委員を独占することができる内容になっている。

ようするに、朝鮮総連関係者が多いほとんどの地域で、総連関係者が委員になることを予測しているのである。となると、この「人権擁護法案」は理想とは無関係に、北朝鮮に関する自由な発言を封じる法案となり、人権を擁護するというよりは、拉致問題やインターネット等の自由な発言を強力に抑圧し、拉致問題の解決に障害にもなりかねない極めて危険なものといえる。

また従来の人権団体には、外国人への人権侵害には敏感で、逆に肝心な日本人への外国からの人権侵害には極めて無関心という冷淡な流れがあって、永い間北朝鮮による拉致はほとんど無視され続けてきた経緯がある。野中広務氏の後を継いだ古賀誠元幹事長は、法案が了承見送りとなった後も、「この法案が一部の団体の圧力でやっているというのは誤解だ」と批判をかわす発言をしていたようである。

やれやれ

■三角合併にからむハゲタカ冷血動物たち

3つ目の事件である「三角合併」に関しては、ライブドアのホリエモン(堀江貴文)のニッポン放送買収による乗っ取り騒動のおかげで、今頃になって法改正の重要性に気づいたのか、自民党があわてて外国株式を対価にした企業合併の解禁を、1年先送りすることになったようである。「合併対価の柔軟化」と呼ばれる規約に従えば、外国企業は、日本に設立する子会社に外国株を移動し、傘下におさめる日本企業の株主に対価として渡す「三角合併」が可能となる流れなのである。( 参考記事

だからこそ私は、前々回の虎の穴会員コラム「六本木ヒルズコネクション」No.58で、このことは「終わりの始まりである」と強く警告していたのである。とにかく、いま新たな「政治潮流」が起きているのである。ナベツネと中曽根コンビの政治勢力が一気に後退して、その代わりに小泉・竹中コンビの政治勢力が新たな潮流を創りはじめている。

ダイエーの中内氏や西武の堤氏や元監督の長島氏が没落し、「総合規制改革会議」の議長の座にありながら、エンロンの日本上陸のエージェントになっていたオリックスの宮内義彦氏等が新たな黒幕となり、その潮流の「震源地」は、どうやら六本木ヒルズ周辺にあるようである。

基本的なことをいえば、フジテレビがすでにTOBをかけているのに、時間外で大量の株式が怪しげなやり方で取引されたのである。「これは違法ではないのだから、合法である」と主流メディア等で騒がれているが、法律的な細部はどうであれ、ライブドアがやったことは明らかに「サギ行為」である。リーマン・ブラザーズにしてみても、アメリカ国内では、こんなふざけた真似はできないはずである。日本は完全に舐められているようである。

そのリーマン・ブラザーズの背後には、今回も恐らく新生銀行を乗っ取ったリップルウッド・ホールディングスやゴールドマン・サックス等のハゲタカ冷血動物連中(クリス・フラワーズやティモシー・コリンズ等)が滴る生血を求めて暗躍しているにちがいないのだ。もちろん、その更なる背後にはロックフェラーがいると思われる。

■地球上から消滅した「経済大国カルタゴ」

ようするに何が言いたいのかというと、日本はあまりにも無防備で、能天気でありすぎるということなのである。日本の政治家がやっていることは、とてもまともとは思えない。スパイ防止法を作るなり、憲法を改正するなりして、現実的な対策を取るべきなのである。いまの能天気な日本の現状は、経済的繁栄の只中で崩壊した「カルタゴ」を思い浮かべてしまう。

深田匠氏氏の素晴らしい著書、『日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略』からカルタゴ崩壊の経緯を引用させてもらうと、二つの紀元前の地中海では、商業国として栄えていた「都市国家カルタゴ」と軍事国家ローマが対立していた。経済力では優れたものを持ってはいても、軍事力では不甲斐ないカルタゴは、紀元前202年にローマに大敗して、事実上軍隊を持つことを禁じられてしまう。それでカルタゴは平和主義を唱えて商業国家として再編成し、瞬く間に経済大国にのし上がっていく。嫉妬にかられたローマは次第にカルタゴに対して政治的に干渉していくようになる。

その結果としてカルタゴにも「親ローマ派」という貴族中心の傀儡勢力が内部に増えはじめることになり、カルタゴの名称ハンニバルはついに追放され、カルタゴの防衛はわずかの傭兵だけの情勢になる。そこに第3次ポエニ戦争が勃発して、カルタゴは没落し占領されてしまう。カルタゴの人口約75万人の内、70万人が殺され、生き残った5万人は奴隷としてローマに売り飛ばされる。焼け残ったカルタゴの街路は無残に破壊しつくされ、700年ものあいだその栄華を極めた「経済大国カルタゴ」は、この地球から永遠に姿を消したのである。

金銭よりも「武」を重んじたローマは、やがて人類史上に残る巨大な古代ローマ帝国を築く流れとなるわけである。そしていまアジアで軍事大国化しつつある中国は、このローマとカルタゴ百年戦争を研究して、そのやり方を、この日本に当てはめているようである。

私たち日本人は、すぐに戦争を「善悪の判断」で考えてしまう傾向がある。世界の国々にとって「戦争」は、外交上の延長線上の果てにある「国益の衝突」に過ぎないのである。もともと戦争に善悪など存在しないのである。交戦国がお互いに唱える「正義」はカバー・ストーリーに過ぎず、戦勝国のみが「善」を唱える権利を手にすることができる。それ以上でも、それ以下でもないのというのが、世界に於ける「普通の国」の真実のようである。 ぜひ深田匠氏の著書を、ご一読願いたい。

 

 

 

 

《主な参考文献および記事》

(本記事をまとめるにあたり、次のような文献および記事を参照しました。ここに、それらを列記して、著者に感謝と敬意を表すると共に、読者の皆様の理解の手助けになることを願います。)

★ 暁か黄昏か 深田匠 (展転社 2003)

★ 日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略 深田匠 (高木書房 2004)

『終』

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